<ラースと、その彼女>小さな田舎町に暮らす純粋で心優しい青年ラース(ライアン・ゴズリング)は、住民みんなから慕われていた。しかし彼は極度にシャイで、特に女性とはまともに口をきくことすらできない。
ある日、そんな彼がインターネットで知り合った恋人を、兄のガス(ポール・シュナイダー)とその妻カリン(エミリー・モーティマー)に紹介したいと言ってきた。ところがラースの連れて来た相手を見て兄夫婦は驚愕する。ラースの恋人とは、等身大のリアルドールだったのだ。
内向的な青年の恋人がリアルドールだった。一見、随分とブラックでナンセンスな設定だと思うかもしれない。しかし、この映画はコメディではなく、傷ついた人々が過去やトラウマと向き合い、また周りの人間が彼らにどう接していくかを丹念に描いた、真摯な人間ドラマになっている。
妄想にとりつかれ、リアルドールに話しかけ、ドライブをし、ひたすらに愛情を注ぎ続けるラース。そんな彼を見て、はじめは狼狽していた兄夫婦と街の人々だったが、心優しいラースのためにリアルドールを人として扱うことにする。そんな周りの人々の暖かい視線がとてもやさしく感じられる。映画全体のゆったりとした居心地のよさは、内容を決して暗くせず、観客も暖かい視線でラースを見守ることができる。
そんな中、周りの努力も知らずに振舞い続けるラースをカリンが怒鳴りつけるシーンには、胸が熱くなった。積もりに積もった感情を吐露した彼女のセリフには、ラースへの愛情がこもっている。人と人のつながりの大切さを再認識させられる。
周囲の助けもあり、リアルドールとの生活を送るラースは少しずつ社交的になり、他人にも心を開くようになっていくが、人間関係が希薄な現代の日本で、この映画は必ず見る人の心を打つはずだ。
ジャナ専 ぷー(JJC漫画研究会部長)
オススメ度☆☆☆☆