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「英語は小学生から」巡りバトル 「国語が重要」VS「使えないと不利」

   英語を母国語とする人口が3億人に対して、外国語で英語を話す人は17億人いるという。英語はいまや完全な共通言語。さて、日本人は17億人の仲間入りがどこまでできるのかというお話だ。

   精密機器のトップメーカー横河電機の小川永志樹(48)の日々は英語漬けだ。入社24年目の技術者、イントラネットや通信施設の開発担当。パソコンでつくる資料も海外の工場とのテレビ会議もメールも英語だ。「英語が嫌いだから理科系へ進んだのに」

英語は「共通語」

   7年前、12の工場が一気にアジアや中東に移転して以来こうなった。この日は、シンガポール工場と開発中の製品についての打ち合わせだった。向こうは「13か所修正が必要」という。インド系の英語は聞き取りにくい。「サーティーン」「38?」「ワン・スリー」と言い直した。これでOK。

   同社では「パソコンが使えるかというのと一緒。コミュニケーションに必要なもの。うまい下手じゃなく、とにかく話すこと」という。

   リコーでは、大勢の社員が英語の研修を受けていた。東南アジアに最大規模の工場をつくるためで、3か月の講習の後は現地へ送り出される。

   リコーの中村高専務は、自らも42歳からイギリス勤務だったという人。「グループで世界中に11万人いる。うち6割が外国人ですから、コミュニケーションは英語になる」という。

   昔、技術者は作って売ればよかったが、いまは客の要望に応えてものをつくるのが仕事。工場も客の近くにつくり、技術者が直にコミュニケーションする場面もあるという。

   国谷裕子が「初めてイギリスへいったときはどうでした?」

   中村専務は「出てこないんですよ。発音がどうか、文法は正しいかと思っちゃうと」

   同時通訳でもある鳥飼玖美子・立教大教授は、「日本人は完璧主義だから。英語はいまや英語国民でない者同士が使う共通語になって、機能が違ってきている」

   中村専務は、「コミュニケーション・ツールなんですね。だから短いセンテンスでどんどんしゃべると、相手が、お前の云うことはこういうことかと助けてくれるようになる」

   鳥飼教授は「それが大事なこと。相手が必ず反応してくれます。互いにやればコミュニケーションが成立する」

   中村専務は「日本語でもなんでも、おしゃべりな人がいい。間が空かないから」

中国の英語教育に注目

   ここで2人の識者の異なる見解が示された。1人は吉田研作・上智大外国語学部長。中央教育審議会委員で、英語教育を進めてきた。注目するのは中国の英語教育だ。小学校から必修で、とくに自分の意見、自分を表現する道具ととらえて、徹底的な実践教育。

   「英語は事実上共通のコミュニケーション・ツール。これが使えないと不利になる。ハングリー精神が強いから、生きていくために必要だとはっきりしている」という。

   もう1人は数学者で、「国家の品格」の著者である藤原正彦。使える英語を過度に求めることに懐疑的だ。「ツールだから片言で通用する。それより読む力、国語が重要だ。読むことで教養になり大局観や長期的視野が生まれる。伝達する方法よりも、内容だ」と。

   鳥飼教授も「語るべき内容をもつこと。読む、書くことがないと、話す内容が薄っぺらになってしまう」といった。

   まあ、どちらにするかという話ではあるまい。日本語が薄っぺらな人は、英語でもそうなのだから。といって、滑らかにしゃべりたい。日本人の永遠のテーマ。わが身を振り返っても、もう遅いか。

ヤンヤン

   *NHKクローズアップ現代(2009年4月2日放送)