<スラムドッグ$ミリオネア>英国発祥で、日本でも馴染み深い番組「クイズ・ミリオネア」。このあまりにも有名なクイズ番組が映画内で使われていること、そして作品賞をはじめとする計8部門ものオスカーを受賞したことで、日本でもこの映画の話題性はバッチリである。
あまり興味がなかった人でも、みのもんたとコラボしたあのCMを見ると「クイズ・ミリオネア」の映画がアカデミー賞を獲るなんて、一体どんな物語なんだろうと気になってしまうかも知れない。確かにあの番組は劇中で効果的に描かれている。しかしメインはそこじゃない。主人公・ジャマールの逞しさや、幼い頃に出会う女性・ラティカ(エヴァ・ロンゴリア似の美女!)を一途に思い続ける力強さこそが見所であり、観客を惹きつけるのである。
貧困が激しいスラム街出身のジャマールは「クイズ・ミリオネア」に出場し、あと1問で史上2人目の全問正解者というところまで辿りつく。しかし高貴な者でも到達できなかった域に、教養が無いスラムドッグ(=落ちぶれ者)のジャマールが辿り着いたことで不正をしたと疑われ、逮捕される。どうして答えを知り得たのかとさんざん尋問されるが、奇しくも数々出題されたクイズの答えは、ジャマールがどん底を生きてきたなかでそれなりに得た知識と重なっていた。
ジャマールが尋問に答えるように彼の生い立ちが描かれていく。それはクイズの答えを知る経緯だけでなく、同時にスラム街の貧困や宗教対立、子供たちを使って行う非道な商売などの過酷な現状をも知ることになる。ジャマールは「その答えは知らない方が幸せだった」と呟くが、その経緯を見ていくうちに呟いた言葉が胸に突き刺さる。それでも兄とたった2人で、ときには陽気に生き抜いていくジャマールを見ていると自然と勇気を貰えるはずだ。
展開的には現在と過去を行き来するも、シンプルながらに巧みな構成のおかげで、とても見やすく分かりやすい。一言で言ってしまえば、どんな状況に陥っても最後まであきらめなかった少年が掴むサクセス・ストーリーで、少々ご都合主義的ではある。しかしだからこそ小規模ながらにハリウッドでも受け入れられた要因がそこにあるように思えるが、逆にそれだけ観客は魅了されたのだろう。多くの人を惹きつける、とても活気に満ちた映画である。
ジャナ専 巴麻衣
オススメ度:☆☆☆☆