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道路はもういいから他に… それが許されない仕組み

   <テレビウォッチ>国道建設の凍結を発表した国と地方自治体の間に亀裂が生じている。困惑した自治体が国直轄の道路事業の地方負担金について支払い拒否を主張し始めたのだ。

   今回のテーマは、突然の凍結で困惑する自治体、その自治体が厳しく財政を圧迫されるまで道路をつくり続けてきた背景をクローズアップした。

18路線の建設凍結

   ただ、その背景には国や自民党道路族主導の強引な道路行政があるはずなのだが……国谷キャスターは「後のことを考えず借金を積み重ねて、なぜ地方は道路、道路、道路と作り続けたのでしょうか」と、マトを地方自治体の問題に。

   大元をクローズアップしないと、国の仕組みに乗せられ、借金漬けになっている地方ばかりが悪く、バカに見えるのだが……

   番組はまず、国交省が今2009年3月末に発表した全国18の国道建設の凍結で、困惑している新潟県のケースから。

   新緑が美しい山間に、工事半ばのまま異様な姿で立っているコンクリートの橋脚。今年3月末、この道路の建設が国によって凍結された。

   道路沿いには重症の救急患者を受け入れる県立病院の候補地もあり、あと5キロの工事を終えれば完成する矢先だった。

   国交省が「ムダをなくす分かりやすいルールがどうしてもいるから」と、コストの割には経済効果の低い道路建設の基準を見直し。

   このルールの適応で凍結された18路線の国道のうちの1つとして、この道路が対象になった。

   国はなぜ急に凍結をという疑問もわくのだが、新潟県の財政状況を見ると、なぜここまで道路事業にのめり込んだのかと逆の疑問が生じてくる。

   新潟県は他の自治体に比べ、道路事業費が非常に多い。県が道路建設に使った借金は1989年に527億円だったが、2007年には5866億円と10倍以上に膨れ上がっているのだ。

   この借金の返済額は07年400億円。年間300億円という道路財源を返済に充てても足りない、深刻な状況だ。

   冒頭に触れた国谷の「後のことを考えず、なぜ地方は道路、道路、道路と作りつづけたのでしょうかね」という疑問も当然なのだが……

「選挙では業界の支援が大きい」

   その背景に、大規模な道路事業を推し進めるために国がつくった仕組みを見過ごすことはできない。

   道路事業費の半分を国が補助金で賄い、残りを自治体が負担する。さらに自治体負担分の半分を借金(地方債)で賄えるようにしたうえで、借金の半分を交付税で補う。

   つまり小さな元手で大きな事業ができる仕組み。これを使って新しい道路が次々と建設され、同時に借金も膨らんでいったわけである。

   番組に出演した前鳥取県知事の片山善博慶大教授は、国がつくったこの借金漬けの仕組みを次のように語った。

「福祉とか教育は丸々元手がいる。道路は元手が少なくて大きな事業ができ、事業化しやすい。取りあえず何かやるとしたら道路がやりやすい。
それに選挙をやると分かるが、道路建設業界の支援が大きい。(そういう支援が大きい)業界の仕事が増えるといいなと、つい考えてしまう政治家が多いこともある」

   国主導による道路行政の聖域化、その背後にいる自民党道路族……

   片山教授はちょっぴりそこに触れたが、「道路依存体質からの脱却は容易ではないですね」で、国谷はそれ以上踏み込むことはなかった。

   ただ、言い足りなかったのか、片山教授は最後に付け加えた。

「道路特定財源は名目上なくなったが、国は予算措置を通じて道路しか使えない形で金を地方に回す。道路整備はもういいから他に使いたいといっても、道路以外に使えないいびつな形になっている。これを変えねばダメですよ」。

   このからくりからの脱却も次の総選挙で問われる大きな争点のはずなのだが……

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2009年6月3日放送)