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「自衛隊」海外での武器使用 ソマリア沖の先に見えるもの

   <テレビウォッチ>自衛隊も「チェンジ」の時が来たのか。その第1歩になるかもしれない海上自衛隊の護衛艦2隻が、ソマリア沖で海賊対策に当たるため7月6日、日本の基地を出港する。

海賊対処法施行で一変

   3月から任務についている第1陣と交代する『あさぎり』と『はるさめ』の2護衛艦だ。この部隊は、7月24日施行となる『海賊対処法』に基づき、警告を無視した海賊船に直接射撃ができるようになった。

   もし武器が使用されれば自衛隊では初めてのケースとなる。それだけでなく今後の自衛隊の在り方を大きく変える可能性を秘めており、その意味でソマリア沖で活動中の第1陣とはガラリ性質を異にする。

   第1陣の部隊は、武器は使わない。これまでも弾の代わりに、大音響を発生させる特殊な装置、音で不審船を追い払ってきた。外国海軍と海賊船との間では銃撃戦となるケースもあった。

   海賊対処法では、これまで認められなかった外国船にも護衛対象を拡大、海賊船の船体射撃も容認しており、武器使用の相手と直接向き合うことになる。

   第2陣は武器使用によるケガ人を想定し、医療チームとして医官、看護師、救急救命士、放射線技師、臨床検査技師など合計10人に増やしている。

   一方、隊員も相手船体に命中させずに目標近くに銃弾を撃ち込む警告射撃を重視し、訓練を行ってきた。

アメリカの期待「どこを念頭に?」

   スタジオには、取材した石山健吉記者と安全保障問題専門の植村秀樹・流通経済大教授が出席。

   国谷キャスターに出航準備を進める部隊の印象を聞かれ、石山記者は「装備があそこまで強化されているのに正直驚きました。ずいぶん踏み込んだ海外派遣になっているという印象でした」。

   「そうした自衛隊活動の変化をどう捉えていますか?」(国谷)に、植村は「今回は警察活動という法的位置づけがある。ただ、法的な問題よりも政治的意味で、武器を使用する象徴的な第1歩になると思う」と。

   その政治的意味合いから、自衛隊の活動が近い将来、より危険な局面に踏み込まざるを得なくなるのではないか。そんな懸念が現実に強まりつつある出来事があった。

   ソマリアの偵察活動のために自衛隊は対潜哨戒機P3C 2機を派遣したが、ありがたいことに現地の米軍は到着を祝ってパーティーを開いてくれた。さらに隊員の宿泊用にコンテナ施設を明け渡したり、米軍の食堂を一緒に使用できるようにしたりした。

   ところが、そんななか6月下旬、米海軍作戦本部のウィリアム・クラウダー作戦次長(中将)が防衛省を訪れた。訪問の狙いは、今後、日本が多国間の活動へ積極的に関与することに期待感を示すことだった。

「自衛隊が海賊対策の任務に乗り出したことはとても重要だ。日本政府の決断は、日本が国際社会共通の重要課題に対し、より積極的な役割を担っていくという姿勢を示したものと受け止めている」

   植村は「このまま連携が深まっていった時に、どこまで関与していくのか、対応を問われる時がくると思う。ウィリアム中将の発言の意味するところが、どういう活動を想定し、どこを念頭に置いているか気になる」と。

モンブラン

   *NHKクローズアップ現代(2009年7月1日放送)