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「民主政権」で浮かれるメディア マンネリ選挙報道にウンザリ

   深刻な雑誌不況の中で明るい話題は、人気ブランドの限定付録をつけた宝島社の「ブランドムックシリーズ」がヒットしていることだと、朝日新聞が報じている。

   「今年2月発売の『キャス・キッドソンへようこそ』の第2弾は発売からひと月たらずで35万部を売り上げ、若い女性に人気の「Cher」(シェル)の春夏コレクションカタログも30万部」「8月6日には「Cher」の秋冬カタログを発売予定だが、人気を予測してムックシリーズでは過去最高部数の70万部を発行する」(7月26日朝刊)と現況をまとめている。

   この人気の背景については、「ムックの付録が直営店でも買えない限定品であること」「ブランドファンの心をくすぐるお値打ち感、がある」(同)などと分析している。

「民主に厳しい選挙」となる理由

   以前にも書いたが、雑誌の付録規制が緩やかになってから、ストッキングやバッグの付録は当たり前になってきた。

   以前から規制の緩い外国では、フライパンなどの料理道具はもちろん、ダイエットのクスリまで付けるところがある。

   だが、一時ブームになった付録合戦も、コストが嵩むため、売れても利益が出ない、読者が定着しないなどの理由で下火になっていた。

   宝島のやり方は新しいものではないが、豪華さとレア感をうまく出して売り上げに結びつけているようだ。ただこれもどこまで続くのだろう。うま味がわかれば、他社も参入してくるし、どれだけ豪華な付録を付けられるかの競争になる。消耗戦で、疲労していくのは出版社のほうである。原点に返って、読みたい、読んでおかなくてはいけない記事を提供して、読者に買ってもらうことに専念するべきだと思うのだが。

   このようなことを書いたのは、週刊誌のマンネリ選挙報道にうんざりしているからだ。 どれを読んでも同じことしか書いていない。しかも、今週のポストと朝日は、タイトルまでほとんど同じである。

   「民主党政権『得する人』『損する奴』」(ポスト)、「民主党政権で得する人損する人」(朝日)

   すべてのマスメディアが「民主党政権」ができたように浮かれているが、それほど民主党が大勝できるか、私は疑問に思っている。

   朝日の「ギロン堂」で田原総一朗さんが、今回の総選挙は、民主党にとっても予想外の厳しい選挙になると書いている。その理由の1つは、東京都議選挙で民主党が勝ちすぎたこと。有権者というものは、バランス感覚を働かせるものだからだ。

   2つ目は、民主党は野党であるのに『与党』扱いされていることである。「民主党は攻めの技術には長けているが、守りには全く慣れていない。40日間もの間、守り守りで自民党の攻めに対応するのは決して楽な作業ではない」

   3つ目は、民主党が掲げているバラ色のマニフェストの財源問題。民主党は歳出102兆円の中にムダが多いと主張するが、「自民党も財務省も全面的に否定している」。

   財源の捻出問題は、政権奪取してからの話になるが、民主党にとっては長く厳しい選挙戦になるはずだ、と私も思う。スキャンダルや失言も飛び出すかもしれない。ゴルフのように、パー241(過半数)から、いくつボギーやダボを叩いて、いくつ議席を減らすのか。民主党の単独過半数危うしと見る。

必読「レーシックと後遺症」記事

   今週のお奨めは、文春の「院内感染だけではなかった 被害者9人の告白『レーシック(視力回復)手術』が危ない」。私の周りにも、レーシック手術を受けて視力を回復した友人、知人が多くいる。

   タイガー・ウッズや松坂大輔もこの手術の体験者である。私のところに長年パラサイトしている家人も、いい年をして、私もやってみようかなと言いだしてるほど、関心が高くなっていることは事実である。

   しかし、しばらく前には、疑問のある手術だとして、新聞や雑誌にも批判記事が出ていた。100%安全な手術などないが、私の友人に、レーシック手術を受けて、極度のドライアイになり、日に何度も痛んで、目を開けていられないというのがいる。

   この手術を受ける人は年間40万から45万人もいるという。今年2月に銀座眼科でレーシックを受けた70人以上の患者が、集団感染を起こす事件が発生したが、問題は感染症だけではなく、手術の後遺症に悩む人が多くいることだ。

   術後、手元が全く見えなくなり、パソコンも眩しくてできなくなって、肩こりや背中の痛みが酷く、仕事を辞めざるをえなくなった20代の女性。

   別の20代の女性は、遠くは見えるようになったが、手元がぼけてしまって、以前はなかった乱視まで出てきた。

   日本のレーシック手術は、品川クリニック、神奈川クリニック、神戸クリニックがほとんど独占している。中でも品川は50万件以上の症例をもつ最大手で、手術代は17万円、安心治療を謳っているが、今回文春が取材した9人の中の5名が、品川で手術を受けていた。

   「レーシックとは角膜にレーザーを当て、光の屈折を矯正することで視力を回復させる手術である。レーザー照射が長いほど矯正も強くなるが、その分角膜は削れて薄くなる。レーシックの後遺症に苦しむ患者の診察をしているある眼科医は、遠視や調節緊張になる原因は視力を出し過ぎる『過矯正』に問題があると指摘する」(文春)

   多くのレーシック手術では、視力2.0を謳っているが、日常生活では1.0あれば十分で、0.8とか0.9あたりのほうが快適なのだという。コメントを出している眼科医のところへは、月に80人から100人の後遺症をもつ患者が訪ねて来る。「行政と学会はレーシック手術の安全性をいま一度検証すべきではないのか」(文春)。レーシック手術を受けようと考えている人にとっては必読である。  


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか