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「肝臓みたいな解毒作用」もつ雑草 広がる「除草剤が効かない」

   <テレビウォッチ>除草剤が効かない「スーパー雑草」が各地で急激に増えている。宮城県北部の水田では、稲穂の列の間にびっしりと「オモダカ」という白い花をつけた雑草が生えていた。3年くらい前からで、除草剤は全く効かず、抜いてもまたすぐ生えてくる。

   稲の養分を吸い取るので収穫量も2割がた落ちる。地域によっては広がりは農地の3分の1に及ぶという。除草剤は、草取りという重労働から農民を解放し、農業の効率を高めた功労者だったはず。それがなぜ? しかも急速に?

酵素が変異

   除草剤は雑草の酵素に作用して繁殖を妨げるもの。だが、研究機関の分析では、このオモダカは酵素の形が変異していて、除草剤を受け付けないという。

   かつて除草剤は、雑草の種類によって異なるものを使っていた。それが1960年代になって、SU剤という何にでも効くものが開発された。ちょうど低農薬志向があって、農薬を減らすため、これに頼ってしまった。これがひとつ。

   もうひとつ、農業の現場の高齢化で、作業をやめたり委託したりする農家が増え、その解決策としてトラクターの共有化が進んでいる。田んぼから田んぼへと移動するトラクターが、雑草のタネを運んでいるというのだ。

   伊藤一幸・神戸大教授は「オモダカは本来水の冷たいところの特殊な雑草だったのが、いまは九州まで広がっている。ざっと100万ha、日本の水田の約半分に及んでいる」と。

   スーパー雑草は、世界1の穀物輸出国アメリカで、深刻な事態になっている。ジョージア州の大豆農家では、「オオホナガアオゲイトウ」という雑草がまん延してお手上げ状態になっていた。

   ここの大豆は遺伝子組み換えで、強力な除草剤にも耐える。その強力な除草剤で農作業の効率を高めてきたのだが、それが効かないとなると、お手上げだ。ある農家では、耕作地が東京ドーム107個分もあるのだ。「コストと手間で収益が25%減った」と。

植物使った総合防除

   アメリカが深刻なのは、遺伝子組み換え作物と除草剤がセットで考えられていることだ。大豆は91%、トウモロコシは85%が遺伝子組み換えだ。遺伝子組み換えをリードするモンサント社では、「ひとつの除草剤を過信していたかもしれない。しかし。克服できる」という。

   だが、米南東部で、この5年間に2800倍に広がった。また、カリフォルニアでは、4種類の除草剤が効かない「タイマビエ」という雑草ができていた。

   つくば市の中央農業総合研究センターではいま、植物を使った総合防除に取り組んでいる。例えば、トウモロコシの間にクローバーをまくと、根が横に広がるので、雑草を抑えることができる。

   伊藤教授は、「適地適作で、土地に合った品種栽培が大事。アメリカのように何万haという広大な面積で、1種類だけを繰り返し使うと、抵抗性のあるものが生き残る可能性が高くなるのは当然」といった。

   また「カリフォルニアのタイマビエは、人間の肝臓みたいな解毒作用をそなえてしまった」という指摘は恐ろしい。

   日本もアメリカも、形こそ異なれ、本来の農業の形には戻れない状況になっている。農薬や除草剤が、そうさせてきたといってもいい。「スーパー雑草の逆襲」は、まさしくSFの世界だ。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2009年9月7日放送)