<テレビウォッチ>新型インフルエンザの発症者がこの1週間で154万人になった。従来の季節性が、12月から始まり1、2月にピークだったのに、新型は8月から始まり現在すでに、数のうえで従来型のピークに達している。
感染してもほとんどは軽症ですむのだが、14歳以下の子どもの肺炎と脳炎の重症化が特徴で、厚労省は11月6日、子どもへのワクチン接種を早めるよう都道府県に呼びかけた。
横浜市の大学病院では、連日重症の子どもが運び込まれている。呼吸困難だけでなく、心臓や腎臓の機能も落ちる。医師は「わずか半日で呼吸困難になる」と、家庭や診療所での判断の重要性をいう。カギは、顔色、呼吸の状態、意識の混濁などだという。
なぜ子どもなのか。東大でウイルスを検証した結果、新型は従来型と違い、肺で急激に増殖し、肺細胞を破壊して呼吸に必要なスペースを潰してしまうのだという。呼吸が異常に早くなるのが、危険信号といわれるゆえんである。
しかし、肝心のワクチンが足らない。厚労省は、11月末までに54万回分を用意し、医療関係者に20万回分、基礎疾患のある人・妊婦に34万回分を割り当てる予定だった。が、子ども用に当てるため、医療用のうち緊急でない関係者分10万回分を回すことにした。
しかし、これが診療所単位になると、50人分とか100人分だ。「600人からの予約があるのに、次がいつ、どれくらいかもわからない」と現場の医師はいう。ために、対応も「とにかく重症化の兆しを見逃さないこと」というだけだ。
東京都は厚労省の呼びかけより早く子ども対策に動いたが、NHKの調べでは、大阪府が決定、19県が検討中、他県は「予定がない」。主な理由もまた、「ワクチンがない」だった。
NHK科学文化部の藤原淳登記者は、「ワクチンは事前に免疫を作って重症化を避けるもの。だが、国内生産だけでは追いつかず輸入にも頼るので、行き渡るのは3月になる」という。
森本健成キャスターが「いつ感染するかわからないのに?」といったが、とりあえずは、「人ごみを避ける、手を洗う」といった対策しかないのだと。
自衛の手だてを模索する例も紹介された。
東京の精密機器メーカーは、製品のシェアが世界の7割というだけに、生産を止められない。そこですでに4月から◇来客の体温を測り、危険と判断すると、社内に入れない◇家族などに発症者が出ると、ピンクのマスクをつける……などの対策をしていた。それでも、工場で11人が発症したという。
松山市の小学校では、対策を5段階に分け、たとえば◇県内流行になったら、向かい合って給食をとらない◇クラスに1人出たら、全員マスク◇4人で学級閉鎖……などで、これまで、1クラスの閉鎖だけで切り抜けていた。しかし、今月予定の音楽発表会をどうするかで、頭を悩ましていた。なお手探りが続く。
危機管理に詳しい三菱総研の野口和彦理事は、「これをやらないといけない、と思い込まない。中止する勇気を持つ。対策を複数、最悪のシナリオまで用意すること」という。個人レベルでは? 「感染してるのに無理に出社などしないこと」
いざとなるまでは、人ごとのように考えているのが普通。しかし今回だけは、ちょっと神経を使った方がよさそうだ。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2009年11月9日放送)