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小沢一郎のナゾ 解くメディアはどこだ

   9月まで在日米国大使館でメディア分析・翻訳課課長をしていて帰国したウィリアム・L・ブルックスさんが来日したので、2時間ばかり日米関係について話し込んだ。ブルックスさんは、15年に渡って日本のメディアや政治を分析して、歴代大使や大使館幹部にブリーフィングをしてきた。

   彼は来日する前、オバマ大統領の訪日にあたって大統領から求められ、日本についてのアドバイスを書面でしてきたという。

「二重権力じゃない一元支配だ」

   「緊密で対等な日米関係」を掲げる鳩山政権は、普天間基地移転問題で日米間がギクシャクしているが、ブルックスさんによれば、アメリカ側はそれほど重大視していないという。つまり、間もなく日本側が折れるだろうということだ。

   難しい問題があるとすれば、小沢一郎幹事長とのパイプが大使館にないことだという。前任のトーマス・シーファー駐日米国大使は小沢氏と1回しか会えていないそうだ。パパ・ブッシュの湾岸戦争の頃は非常に良好な関係だったが、今の大使館には彼とのパイプがなく、日本最大の実力者である小沢幹事長が、日米関係を含めてこの先何を考えているのかがわからないと首を傾げた。

   小沢幹事長は日本人にとってだけではなく、アメリカにとっても大きな謎なのだ。この謎を解くことこそメディアの使命だと思うのだが、どの週刊誌も隔靴掻痒の記事ばかり多い。

   現代は「誰か止めてくれ!『絶対服従』『密告』『吊し上げ』小沢軍団大暴れ!」。ポストは「小沢一郎『闇将軍の集金&集票マシーン』大研究」。毎日は「小沢独裁『陳情ルール』自民が『干上がる』決定打」。文春は「片山善博前鳥取県知事が緊急提言 小沢さん、このままでは改革は失速する」

   内容はほとんど横並び。10月23日に起きた「事業仕分けワーキンググループ」に、比例で復活当選した新人議員を入れたことに小沢氏が激怒し、仙谷由人行政刷新相があわてて面会に行ったら6日も待ちぼうけを食わされた。

   自民党政権下では、各種業界団体からの陳情は、その分野に精通する政治家を通じて中央省庁や自民党の部会に上げられてきた。それ故、族議員なるものが幅をきかせていたのだが、これからは、幹事長室が集約して政府側に伝えるということに小沢氏が決めたのだ。これは、自民党に対してどこも献金しなくなるよう兵糧攻めにする戦略だなどなど。

「民主党のベテラン議員は、本誌に対してこう嘆息した。『二重権力とか、そういう批判があったが、間違っているよな。<小沢の一元支配>なんだから。彼を怒らせると、党に居場所がなくなってしまうんだよ』」(現代)
「党高政低の『北朝鮮状態』だ」(毎日)

   メディアは、お決まりの小沢独裁だと批判するが、ご当人はそれがどうしたと一向に気にかける風も見せない。

   右も左もわからない1年生議員の教育係を引き受け、来夏の参議院選挙に大勝すべく、票割りや協力先を行脚するのだから、党内の小沢批判派も声を上げにくい。

不審死・逃走劇・女子大生殺し

   片山前鳥取県知事の真っ当な批判も届きそうにない。

「比例復活の議員の処遇も可哀想に思えます。(中略)国会議員の仕事は、次の選挙のために辻立ちすることではありません。そんなことをしてもらうために国民は高い歳費を払っているわけではない。地元で選挙活動ばかりするのなら、歳費を返上してからにしろと言いたいですね」(文春)

   政治アナリストの伊藤惇夫氏がいうように「小沢氏が権力を握ること自体は否定すべきことではないが、それは、こういうことをするために権力が必要なのだと国民に説明するべきでしょう。それをしないで権限を肥大化させているから、党内にも、国民にも不気味な不安感を与えてしまう」(ポスト)のだ。

   小沢幹事長はメディアの操り方をよく知っている。表に出ないで説明もしなければ、メディアが勝手に虚像をどんどん膨らませてくれるのだ。それは、小沢氏が最年少で自民党の幹事長になったときから、私がかかわった雑誌で小沢批判を続け、結局は、彼の虚像を大きくすることに一役買った反省を込めて、そういえる。

   週刊誌を含めたメディアは、今こそ総力を挙げて、小沢という永田町最大の謎を解き、彼の正体を白日の下に晒してもらいたい。

   不謹慎ないい方だが、このところ、週刊誌にとって嬉しい悲鳴を上げたい事件が続出している。関東、鳥取で起きた30代の豊満女性とかかわった男性たちの「不審死」疑惑。これは新聞、テレビが実名報道しないために、疑惑を持たれている女性の写真が見たければ週刊誌を買うしかない。これに、英会話教師の死体を遺棄したとして逃亡していた市橋達也容疑者の逮捕や、千葉と島根で起きた女子大生殺人など、取材力と切り口を試される事件がこれほど続くのも珍しい。

   事件は週刊誌の華。総花的ではない読み応えのある記事を読ませてもらいたいものだ。