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サッカーW杯も3次元映像で 迫りくる「3D革命」とは

テレビウォッチ>国谷裕子が「今日は3D、3次元画像です」といきなり本題だ。画面のサンプルを示したが、むろんテレビではまだ立体には見えない。

   だれもが1度や2度は立体映画を見たことがあるはずだが、いま話題になっている3D映画はまったく違うらしい。ジェームズ・キャメロン監督が撮った「アバター」は、想像上の惑星の物語で、観客が画面の中に入り込んでいるような感覚になるという。

ロボット工学を応用

   アカデミー賞をとった映画「タイタニック」は、当時最先端だったCGを駆使した斬新な映像が売りだったが、その後12年間、キャメロン監督は何も撮っていない。「3Dに挑戦していたんです」という。失敗の連続だったらしい。

   最初の3D映画は1951年にできたが、2台のカメラを並べて撮った画像は、遠近が不自然だった。また、左右色の違うメガネをかけるために目が疲れるなどで、定着しなかった。

   キャメロン監督は、これをカメラから開発し直したのだという。カメラの2本のレンズの間隔を人間の目と同じ6.5cmにして、さらに「ロボット工学」を応用して、人間の目が近接では中央に寄るように、焦点によってレンズも動くようにした。

   また、映像を見るメガネの技術は、米航空宇宙局(NASA)にあった。火星の表面の凹凸などを見る技術で、右目用と左目用の画像を交互に出てくるようにし、スクリーンからの信号を受けたメガネが、シャッターのように左右交互に見えるようにしたのだという。

   監督は「3D革命だ。もう2次元には戻らない」という。ハリウッドでは今2009年19本の3D映画が出て、ずっと減り続けていた映画館の観客が10%増えた。「3D元年」ともいわれる。来年は50 本。冬の五輪もサッカーのワールドカップも3Dで撮影されるという。

   薄型テレビで韓国メーカーに遅れをとっている日本メーカーにも、3Dは巻き返しの切り札。各社しのぎを削るなかで、パナソニックはキャメロン監督の映画の撮影現場を見て、いちはやく3Dテレビの開発に着手。左右別の画像を毎秒120コマ、ブルーレイに書き込み、同様のメガネを使う方式で、来年3Dテレビを発売の予定だ。

映画館はよいがTVでは?と疑問符も

   ただ、3Dのソフトを増やす必要がある。そこで目下、過去の映画を3Dに転換できないかと開発を急いでいる。「これまでにない全く新しい売り方になる」と同社はいうのだが……。

   3Dの可能性について河合隆史・早大教授は、「映画館でなら、奥行き、立体感という非日常も受け入れられる。が、日常生活密着のテレビではどういう形になるか?」と疑問符つきだ。

国谷は「メガネをかけてまで見たくなるものは、どんなもの?」
河合教授「番組としてはスポーツ、音楽、CMなんか面白いも」

   しかし、疑似体験型の効果となると、医療、デザイン、建築、文化遺産、学習・教育と、際限なく広がる可能性はある。教授は「ソフトの開発には、芸術的なものと工学的な知識・技術とが要る。そういう人をどう養成するか。また、人への影響など幅広い取り組みも必要になる。重要なのは、3Dの効果を検証しながら進めることだ」という。

   デジタル化ですらまだだというのに、テレビ画面の3D化がどれほどのものか、いまひとつピンとこない。まずは、映画館に足を運んでみるとするか。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2009年12月14日放送)