<テレビウォッチ> 国母選手のファッションと、その後の記者会見でにぎわったワイドショー。
そして、いい成績さえ残せば、手のひらを返して喜ぶマスコミの対応。国民が期待するほど安易にはメダルが取れないオリンピック前半戦、マスコミが何かいいネタはないか漁っている中、現れたのが国母選手だった。
彼は格好の餌食となってしまった。度々繰り広げられる番組街頭アンケートでは、あらゆる世代がアンチ国母派であるかのような扱い方。テレビ番組制作で使うアンケートなど、番組側の意図に沿っているものしか扱わない。そもそも誘導尋問的にアンケートを行い、放送では番組に好都合なように編集するわけで、これが世論のように見せかけたいわゆる番組独自調査というわけである。
しかし、こぞって長々と各局は取り扱い過ぎた。テレビを見ていて、いつまでこんな小さなことをネチネチやるのかと、ヘドが出る思いだった。
さて、彼のファッションや言行はアリかナシか、国民の間で大げさに別れたが、私はある番組の会議でも、同じように価値観の違いを感じている最中である。
現在企画中の番組で、出演候補の女の子に対する評価が、かわいいかブサイクかで大きく分かれているのだ。「絶対にかわいい」と太鼓判を押すディレクターに対し、「中の下でブサイク寄り」と判断するプロデューサー。こんなことを繰り返していて、会議はなかなか進行しない。個人の好みではなく、客観的に見てアリかナシかを見極めているはずなのだが、どうしてなかなか一致しない。
仕事だからしょうがないが同性としてちょっと切ないと、別の番組スタッフに、グチってみたところ、あれあれ……彼も同じような経験をしていた。
彼が担当したのは『美人』について考える番組。美人と言われる女性を数人集め出さなくてはならなかったらしいのだが、ここでも美人か否かで大きく意見が分かれたそうだ。制作側が提案した美人な女性に対し、局のプロデューサーはブサイクと判断、これではどうか! と再提案してもまた却下。こんなことを何度か繰り返した挙句、局プロデューサーが考える美人を教えてくれ! と言ったところ、彼が示した女性は……。スタッフは互いに困惑した顔を見合わせたという。
「何が美人で何がブスなのか、感覚がわからなくなった」と嘆く彼。ウチの番組でもそのうちアリそうだと内心ひやひやしてしまう。
さて、アンケート調査のように、番組的に彼女は美人だ! と言い切りにくい企画。結局のところ美人の価値観とは全員一致しない、出来ないのだろうなとも思う。そもそも価値観って人それぞれが違うから面白いんじゃなかったっけと。
最後にこの一言を。
「日本って、こんなオカシナ国やったんやろうか……」
これは、国母選手の報道について感じた海外在住の叔母の意見。偶然帰国中だった彼女は、テレビを見ていて個性の履き違いなどということではなく、価値観の違い云々を言っても仕方ないのではないかと、報道するようなコトなのかと首をかしげたという。
彼女の意見もまた、価値観の違いの現れなのだが……
モジョっこ