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NZ地震サバイバーズ・ギルト―救出されても苦しむ「なぜ私だけ…」

   ニュージーランド南部地震で倒壊、日本人28人 が閉じ込められたままのクライストチャーチのCTVビルをきのう(2011年2月2日)、初めて家族が訪れた。まだ危険なためバスからだったが、家族にはひとつの区切りとなったようだ。

ホワイトデーにハヤシライスの約束

   バスはさまざまな国の家族も含め全部で11台。日本人家族のバスはわずか数分だったが、現場の前で停車した。がれきの山はちいさくなったが、依然手がかりはない。この日は風が強く、砂埃が舞っていた。

   立ち合った徳永久志・外務政務官は「みな総立ちになって、頭を垂れる方、手を合わせる方、さまざまでした」と話した。

   なお安否がわからない蓮本優喜さん(22) の父親豊さん(58)は、「子どもたちが短い人生を精一杯生きたことをほめてあげたい。わずかの望みをもっていたが、現場を見てわずかな望みも絶たれた」と話した。ホワイトデーには、豊さんがハヤシライスを作る約束していたのだそうだ。

   家族の一部はいったん日本に帰り、結果を待つという。また、緊急援助隊の第1陣も今朝帰国した。

自責の念からストレス

   新聞に救出された升谷文香さん(19) が、消防士と笑っている写真が載った。升谷さんを救出したポール・ロッドウエルさんだ。隙間は60 センチしかなく、そこに人がすし詰め状態。さらに火災も起こっていた。升谷さんは左足を梁に挟まれていたが、「お願いだから足を切らないで。あなたを信じてる(I trust you)」といったという。

   病院で回復しつつあるが、9時間かけて救出された直後はものも食べられず、水も飲めない、眠れない状態が続いた。3日たったとき、高校の恩師に電話で「周りはみな行方不明なんだ。助かったのは自分だけ」と泣き出したという。サバイバーズ・ギルトといって、なぜ自分だけ助かったのかという自責の念からのストレス症状だ。9・11や福知山線事故の負傷者にもみられた。焦らずゆっくり話をきいてやることだという。

   司会のみのもんた「みんなで食事していて、気がついたら自分だけ助かったという」

   金井辰樹(東京新聞政治部記者)が「9・11のとき、アメリカでサバイバーズ・ギルトの人たちを取材した。なんで私だけ…と涙流していた」

   三屋裕子(スポーツプロデュサー)「心のキズを治すというのは難しい」

   不明の村上恵美さん(19)のホームステイ先には庭にリンゴの木があった。家の男性は「あと3週間で実るよといったら、彼女の滞在も3週間。とても楽しみにしていた」と話す。

   その実りまであと少し。地震発生から今日で10日。 確認された死者は161人になった。