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福島原発にも共通「JR西・福知山線脱線」の事故原因

   「こんにちは」と挨拶した国谷裕子キャスターは続けて、福島第一原発事故に触れた。「(略)東電、保安院、政府などを対象に、事故発生の原因と背景の徹底的な調査が求められることになります」

   今回の放送は、その福島原発事故の検証にも示唆を与えそうな、JR福知山線脱線事故とその調査についての報告である。同事故では、国による事故調査が行われたが、その後、被害者・遺族多数とJR西日本なども加わり、異例の「事故調査の検証」が行われた。

「仮定の話してったらキリがない」

   事故後、事故原因としてさまざまなことが指摘され、ゆとりのないダイヤやATS(自動列車停止装置)の未設置などの問題点も浮上していた。だが、調査委のぶ厚い最終報告書に載った「(事故)原因」は、行数にしてたった12行だった。それは直接的には運転士のブレーキの遅れであり、背景として懲罰的な教育(いわゆる日勤教育のことと思われる)にも触れていたという。

   遺族らは、運転士の行動は事故の最後の引き金であり、直近の出来事だけを捉えて「原因」とすることに強い不満を持ったという。

   なぜ事故原因は絞り込まれ、その他の要因は消えたのか。当時の事故調メンバーにNHKが聞いたところ、「あのときに、こういう事故が起こりますということは予見がむずかしい」「客観的な証拠がないものを扱うことにはためらいがある」「仮定の話を書き出したらきりがない」などの答えが返ってきた。

   要するに、運転士の行動が「想定外」だったので、それに対して、コレがあれば、あるいはアレがなければ事故を防げたかもしれない云々は事故の「原因」になりづらいといったことらしい。いかにも福島原発でも持ち出されそうな論理だ。

想定外作らぬ二の手三の手

   一方、事故調査の検証チームは、過密ダイヤ、たびたび起きていたスピード超過の見過ごし、ATS未設置など、組織的、構造的な問題に注目。複合的な原因によって、最終的に運転士が事故を起こしたのではないかとの結論になったという。

   検証チームのメンバーのひとりでもあったノンフィクション作家の柳田邦男氏は、やはり福島原発に言及しつつ、今後の安全対策のあり方をコメントした。

   事故が起きた後で、原因を探る。これは後手の調査であり、「『想定外』をつくらないよう、事前にリスク要因をできる限り探って、二の手三の手を打っておく」べきだと言う。

   もしそれが「財政的、制度的な理由で困難なことがある場合」はどうしたらいいのか。安全策の限界を示し、万が一のときに起こりうる事態を情報公開して、策が破れた場合の策まで議論の対象にしていくことだという。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2011年4月26日放送「被害者が問う事故調査」)