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国の出先機関廃止に「変な地雷」天下りポスト置き土産

   2年前に閣議決定され、野田首相の所信表明でも法案提出を明言したはずの「国の出先機関原則廃止」の雲行きがおかしくなってきた。

   国の出先機関とは、都道府県に設置されている中央省庁の地方組織で、国家公務員約30万人のうちおよそ19万人が配置されている。業務は自治体の仕事と重なり、二重行政の弊害、ムダ遣いとして行政改革の目玉に挙げられてきた。

運営組織ごとに「執行役」

   「増税ばかりではない」という姿勢を見せるためか、野田も所信表明で「ムダ削減を進めるためにも、制度設計を進め必要な法案を国会に提出する」と明言した。さらに、「変な地雷が入らないよう注意を払う」とも言ってきた。ところが、内閣府が進めている制度設計の中に『変な地雷』が入る怖れが出てきたのだ。

   国と地方の業務を一体化することでムダを省く改革案だが、変な地雷と指摘されているのは運営組織ごとに置かれる「執行役」というポスト。国の出先機関改革に詳しいPHP総研の宮下量久研究員は、「まだ何とも分からないが、もしかしたら国家公務員がそのまま入って、国の関与が残る可能性がある」という。

公務員「国家」を「地方」に替えてムダ削減演出

   ムダ削減に疑問符がつく話もある。法案づくりを担当する内閣府の福田昭夫総務大臣政務官は、「(国の出先機関の)みんなが地方公務員になりますから、国家公務員として天下るというわけではない」というが、司会のみのもんたは「出先機関はいらないと言っているのに、これでは天下りと変わらない」と吠える。元経産省官僚の石川和男(社会保障経済研究所代表)はこう話す。

「いきなり国の仕事を自治体に中に入れても執行できないのではと、(国の官僚を)派遣する可能性はある。野田さんは『変な地雷が入らないように注意を払う』と言っているが、『オレがやる』とは言っていない。つまり、ここに根本的な国政の問題がある。もはや政策論ではなく気持ちの問題なのだが、それがない」

   ムダ削減のための出先機関の原則廃止は、形だけ変えて中身の変わらない制度になる怖れがでてきた。