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高速バス・ベテラン運転手「身内には怖いから乗るなって言ってる」

   高速ツアーバスの運転手が居眠りして7人死亡、39人が重軽傷を負った事故で、運転手の河野化山容疑者(43)は比較的軽症だったことから1日(2012年5月)、自動車運転過失致死傷の疑いで逮捕された。河野は「疲れていて、居眠りをしていた」と叛しているようだが、運転手の労働環境、待遇などさまざまな問題点が浮上してきた。

働き詰めでも「年収300万円切る」

   問題点その1は運転手の管理監督だ。河野は事故を起こす前の3日間は休みを取っており、その間なにをやっていたのか。家人の話では、家には1か月前から戻っていないという。河野は運転手のほかに内装の仕事にも従事していたというから、内装の仕事をしていた可能性も出てきた。もしそうなら、バス会社は運転手が別に仕事を持っていることを把握していなかったことになる。

   問題点その2。別の仕事を掛け持ちしなければ生活できないほどツアーバスの運転手は低収入なのか。ツアーバスのベテラン運転手たちは「年収300万円を切っている」状態と言う。しかも、「走らんことには家族を養えない。仕事が終わってもバスを洗車したり業務報告書を書いたりがあって、家に帰リ食事をして風呂に入るなどで寝るのは1時間か2時間。そのまま出勤という時もある」という。

   あるベテラン運転手はこんなことを言う。「われわれは実態を知っていますから、身内にはバスを利用しないように言っています」

   司会の羽鳥慎一も唖然としていう。「ショッキングな話ですね」

総務省「規制ゆるい」と指摘しても国交省無視

   問題点その3は国交省の規制の甘さだ。国交省の指針によると、ツアーバス運転手1人が1日に走行できる距離は670キロまで、9時間となっている。670キロは東京から西は岡山市、東は青森・八戸市だ。運転手仲間では「机上の空論」という声が高かったという。コメンテーターの東ちづるも「仲間とドライブならまだしも、お客を乗せたバスですから神経も使うし…」と呆れた。

   見かねた総務省が運転手を対象にアンケート調査したところ、運転手1人の限界は、昼間が531キロ、夜間は439キロだった。総務省はこのデータを基に指針を改めるよう国交省に要請したが無視されたという。今回の事故でようやく反省したのか、国交省は走行距離の上限見直しや、これまで安全確保の責任をバス運行会社にだけ負わせていたのを旅行会社との共同責任に改めるという。

   もう一つ気になるのは、このところ居眠り運転による大事故が多いこと。1日に宇都宮市で起きた路線バスの追突事故は17人が重軽傷を負った。ブレーキ痕がないかったことからこれも運転手の居眠りの可能性がある。今年は天候激変で体調を崩しやすく、つい居眠りしてしまうのかも。規制強化は大事だが、運転手自身の体調に対する自覚もおろそかにされては困る。