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消費増税法「造反」何人?民主党執行部「棄権・欠席黙認、反対は処分」が本音

   野田首相が「政治生命をかける」といった消費増税法案は、26日(2012年6月)にも衆院で採決の見通しとなった。ただ、自民、公明との3党修正合意という、いわば大ばくちだ。小沢一郎元代表は21日、あらためて法案反対を明言、離党の可能性も口にした。自民を含めた三者のチキンゲームは先が読めない。

小沢グループの中にも「実は賛成派」

   与野党合意内容を説明した20日の両院議員懇談会で野田は、「代表選で『ノーサイドにしましょう、もう』と言った。その思いは変わらない。みんなで力を合わせて困難に立ち向かう政党でありたい」と結束を呼びかけた。言葉とは裏腹に、小沢グループに決断を迫るものだった。民自公合わせた議員数は430、過半数は240だから、法案可決は間違いない。問題は小沢に同調する造反議員がどれだけ出るか。54人で民主は単独過半数割れになる。党執行部もそれだけは避けたい。

   小沢の言い分は「増税反対」「マニフェストを守れ」とシンプルだ。「増税の前にやることがある」「国民の生活を守れ」と繰り返す。マニフェストの実現が難しいからこうなったという点にも、「3年半、自分は何をしていた」という問いにも知らん顔だ。

   「社会保障と税の一体改革」といいながら、3党合意は社会保障部分(マニフェスト)を棚上げし、増税だけが先行する内容だ。中間派議員にも異論は多い。しかし、採決に反対して除名になれば、次の選挙ではまず再選は不可能だ。そこへ両派から声がかかる。党執行部としては、棄権や欠席はともかく、除名につながる反対だけは抑え込みたい。

   NHK政治部の曽我英弘記者は「反対を明言した議員は約40人。中間派には賛成論が広がりつつある」という。20日の小沢グループの勉強会には70人が出席したが、賛成の議員も大勢いた。曽我は「小沢氏の自由党と合併して9年、主導権争いが政策面から感情的なものにまでなって、一つの政党としての限界に近くなっている」と言う。そうだ、渡部恒三・最高顧問じゃないが、割れた方がはるかにわかりやすくなる。

この週末に凄まじい囲い込みと切り崩し

   修正協議は自民党の戦略でもあった。伊吹文明元幹事長が先月の衆院の委員会で、「解散に応じなければ協力しないなどと子どもじみたことはいわない。だれだって解散は嫌だ」と笑わせた。これが布石だった。修正協議に引き込んで解散に追い込もうというのだった。

   8日に始まった修正協議で自民党は社会保障の対案をぶつけた。増税は前回参院選の公約だ。民主党のマニフェストにある年金改革などを否定し、「現行制度を基本」とうたっていた。むろん民主党は受けない。タイムリミットは15日。このとき伊吹は水面下で官邸と接触していた。「対案を大筋受け入れれば、マニフェストには柔軟に対応する用意がある」と。そして15日にできた合意文書からは「現行制度を基本」の言葉が消えていた。

   自民は「マニフェストは7、8割撤回された」(大島理森副総裁)といい、民主は「マニフェストは継続された」(細川律夫前厚労相)という内容だった。解散への道筋が見えないままの決着に、自民党内からは「野田政権の延命に手を貸しただけだ」との批判も出た。谷垣禎一総裁にも9月の総裁選の見通しはない。

   野田、小沢、谷垣のだれの思惑に沿う展開になるか。第2ラウンドは法案採決から始まる。民主の造反が54を越えるかどうかで、天地がひっくり返るのだ。すさまじい週末になるだろう。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2012年6月21日放送「『消費税政局』の行方」)