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iPS細胞いよいよ臨床研究―医療現場で実用化いつごろか?

   万能細胞、夢の細胞と騒がれてはや数年。最近はなんだかあまりウワサを聞かなくなってた気がするiPS細胞だが、「クローズアップ現代」によれば、いまiPS細胞は「実用化前夜」(番組タイトルより)になっているという。

   iPS細胞は皮膚の細胞にわずか4つの遺伝子を組み込んだだけで、人間のあらゆる組織や臓器に姿を変える細胞だ。しかし、この細胞は組み込んだ遺伝子が異常を起こしてがん化する問題があった。いくら組織や臓器が再生できても、がんも一緒に連れてくるのでは実用化は難しい。研究が重ねられ、遺伝子を直接DNAに組み込まずに、細胞の中に入れるというやり方を開発したことで、がんのリスクが大幅に下がったそうだ。

   そして、いよいよiPS細胞初の臨床研究が来年にも行われる。網膜の中の黄斑という部分に障害が起きる「加齢黄斑変性」に対して、黄斑をiPS細胞で再生して移植するという。0.06程度の視力が0.15になるといった効果が期待されているそうだ。

「一般的な治療になるまでには10年、20年」(山中伸弥・京大iPS細胞研究所所長)

   iPSの生みの親の山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長によると、網膜については研究が進んでいて、がん化のリスクが少ないことがわかっていることや、万が一異常が起きてもその細胞をレーザーなどで焼くことが可能というふたつの点があることから、網膜がiPS初の臨床研究になったという。

   ただ、臨床研究の先には治験があり、それから実際の医療現場で使われるようになり、「一般的な治療になるまでには10年、20年かかる」(山中)そうで、「夢の医療」までには相当長い道のりとなる。「実用化」の定義にもよるのだろうが、来年臨床研究がはじまるものを「実用化前夜」と呼ぶことも、一般視聴者の感覚としては少々時期尚早な気がしないでもないところではあった。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2012年7月3日放送「『夢の医療』は実現するか~iPS細胞 実用化前夜~」)