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学校・教委「いじめ」なぜ隠す?原因究明は自分たちの過失立証というジレンマ

   「なぜ真実が分からない」。苛立ちを感じさせるこの言葉は、いじめを受けていた大津市の中学2年生が昨年(2011年)10月に自殺した問題を取り上げた今回の放送のタイトルである。

   たしかに、多くの人が苛立っているポイントではあるだろう。生徒が通っていた学校で自殺の原因を知るための調査が行われたが、どうにもそれには目的を達する意気込みが感じられず、そこに教師や学校、教育委員会の保身、なあなあ、事なかれを読み取り、怒りを覚えている人が多いようだ。

大津のいじめ自殺中学「加害生徒登校せず、保護者にも断られ聞き取りせず」

   「クローズアップ現代」が伝える学校側の言い分では、学校の調査には限界があり、子どもたちにも配慮しなければいけなかったという。大津市教育委の教育部長は「子どもたちの動揺があったり、現場の混乱のなかで、いかに情報をきちんと聞き取り分析していくか。事象の確認というのは非常に難しい」と話す。

   また、いじめたとされる同級生は学校に来なくなったり、保護者から断られたりで聞き取りが進まなかった。大きく報道された「自殺の練習」についても、アンケートで生徒16人が触れていたが、自分の名前を書いていたのは3人だけで、その3人に話を聞いたところ、いずれも伝聞情報だった。そこで調査は行き詰まったという。この陰惨でショッキングなエピソードについて、再度、直接見聞きした人を実名で募るといったこともできただろうが、そうした手段は取らなかったようである。

   一方、学校の事故や子どもの自殺問題に詳しいという喜多明人・早稲田大学教授はこれらのアンケートを読んだ。生徒からのいじめに関する記述が200近くあったとし、「学校や教育委員会がこれに真摯に向きあえば、また別の解決の道もあったのでは」と指摘する。

原因究明より組織防衛優先の小役人気質

   なぜ学校や教育委員会はいじめや自殺の原因究明に真摯に取り組まないのか。「原因究明をすればするほど学校の過失責任を立証してしまうというジレンマ」(喜多明人教授)があるそうで、過失責任が認められると賠償しなければいけない、それはまずいという組織防衛の論理が真相解明の妨げになっているという。

   教育者や教育現場には、なんとなく市井より少々ご立派な人間性を期待してしまいがちだが、そこにもサラリーマン根性や小役人気質といったものはしっかり染み付いてしまっているようだ。

NHKクローズアップ現代(2012年7月24日放送「なぜ真実が分からない~大津・生徒自殺 問われる調査~」