11月6日(2012年11月)のクローズアップ現代は「『疑似家族』の闇 ~新証言・尼崎事件~」と題して、いわゆる尼崎連続変死事件を扱った。
この数日の事件報道では、「疑似家族」「ファミリー」といった言葉が流行っているようだ。一連の事件の中心にいるとされるS被告らが、ほぼ他人の家庭に何らかの縁をきっかけにして入り込み、その家族の何人かを手下のように取り込んで、クライムファミリーが形成されていった過程は興味深いものではある。
だが、最近のクローズアップ現代にありがちなことだが、どこかで聞いたような話、既報の追いかけが多く、掘り下げ不足の感は否めなかった。
やや耳に新しいかったのは、昨年11月、コンクリート詰めにされ、遺棄された女性の遺体が見つかった事件のディテールである。この事件では、Sらに加えて女性の娘と元・娘婿のKという本物のファミリーが犯行に関わったとして起訴されている。
この事件のきっかけは「クレーム」だったと言われている。Sは「ファミリー」メンバーのベビーカーが電車の扉に挟まれたとクレームをつけた。その対応に当たったのが駅の助役だったK被告だったという。
もっともSは「クレーム」によって、Kを支配したというわけでもないようだ。番組によれば、SはKのクレーム対応が誠実でよかったなどとほめ、自宅に呼んでもてなしたりして、取り込んでいったという。
そのうち心を許したKはSに妻との離婚話まで相談するようになった。離婚の家族会議の場にもSが参加し、取り仕切っていた。また夫妻の子供たちを取り込んで、親を嫌わせ、罵倒させた。そして、すっかり親が嫌になった子供たちを、Sは自分のマンションに連れて行き、一緒に住むようになった。Kには養育費を請求したという。
Kはその支払のためにクレジットカードで借金をするなど、ますます身動きが取れなくなっていった。「娘を人質に取られたような状態で、S被告の言うがままになっていた」(Kの兄)という。
ボンド柳生