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日本料理の「UMAMI」世界のトップシェフたち大注目!発見された5番目の味成分

   日本料理の味の基本をなす「うま味」が、いま世界のトップシェフをとりこにしている。「へえ~」といいたくなる。酸味、甘味、苦味、塩味 とは違う、日本人ですら説明はむずかしい味だ。それが第5の味として認知されているのだそうだ。

   昨年秋、ロンドンに京都の料理人が一風変わったレストランを開いた。これまでにない味が話題だ。刺身の盛り合わせはオードブルの雰囲気。鯛の昆布締めは昆布の代わりにドライトマト、巻き寿司は海苔の代わりに西洋赤かぶのベジタブルペーパーといった具合だ。ニューヨークの料理大学では、京都の日本料理店主を講師に、「UMAMI」講座が続く。

京都料亭の「うま味勉強会」に詰めかけるベストレストラン料理人

   転機は2002年に舌の表面にグルタミン酸を感知する受容体が見つかったことだった。欧米ではそれまで他の味を引き立てる風味のようなものと考えられていたものが、独立した味であることが明らかとなったのだ。

   2005年、京都の料亭の三代目・村田吉弘さんが、うま味を理論的に教える勉強会を始めた。世界のシェフが自費で参加し、5年で50人近くになった。彼らがいま各地でうま味運動を展開しているという。

   料理界のアカデミー賞といわれる「世界のベストレストラン50」で3年連続世界一に選ばれたコペンハーゲンの「Noma」のシェフも京都で学んだ1人だ。「Noma」は研究所をもっていて、北欧の食材からうま味を引き出す研究もしている。そこのベン・リードさんが取り出したのは、鰹節ならぬ「鹿節」だった。シカの足をいぶして熟成させたもので、これを薄く削ってスープにする。エンドウ豆 の味噌もある。デンマークの海藻を煮出した汁を干し固めたものは、「うま味の塊だ」という。

   和食の世界遺産化プロジェクトの座長を務める静岡文化芸術大の熊倉功夫学長は、「ぼくらにしかわからないんじゃないかと思っていたものが、認知された。すごいことです」という。「西洋では新鮮な肉や野菜を長時間煮出して味を作る。だからうま味に気づかなかったんです。日本人は材料に時間をかける。鰹節は何か月もかかる し、昆布は1年間も熟成させる。そして一瞬のうちにうま味を引き出すんです。といって、うま味だけではスープにならない。全然違うんです。でも、鹿節にはびっくりした。自分たちのうま味を作り始めている」

ドライマウスに昆布茶。がんや認知症治療にも有効性

   うま味は医療の現場でも注目を集めている。仙台の病院では加齢や薬の副作用で起るドライマウスの患者に、うま味豊富な昆布茶を使う。うま味が口の中の受容体に触れると粘り気のある唾液が出る。唾液の分泌は甘さや、酸っぱさなど他の味よりも多く、かつ長続きする。がん治療の副作用で味覚異常になった患者の食を進める試みも始まっていた。栄養、抵抗力、免疫力の改善は、がん治療の行方を左右するからだという。

   認知症にも有効らしい。80歳の女性はベッドにもたれて食事をしていたが、うま味成分を多くした食事に変えたら3か月後には体を起こして食べ始めた。調査は11人に行われたが、全員の表情が改善し、7人はしゃべり始めたという。

   九州大大学院の二ノ宮裕三教授は「うま味の受容体は胃や腸にもあり、グルタミン酸がスイッチになって食べた満足感を脳に伝える。これによって、薬ではなく食品で予防医療ができ るかもしれない。例えば肥満とか」という。

   こうなると、もう食いしん坊の話ではなくなる。祖先がいかに素晴らしいものを作り出したかの証明ではないか。われわれは何気ない日々のうま味の中で、健康と長寿を得ていたのだ。だれだ?サプリだ何だと余計なことをいうヤツは…。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2013年月日放送「『UMAMI』が世界を制す!?発見 驚きのパワー」)