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FBIもつかめない「ホームグロウン・テロ」米国内に広がる憎悪の芽

   ロシア南部出身で生まれアメリカ移住した兄弟は、なぜボストンマラソンを狙って無差別爆破を仕掛けたのか。9・11以来、アメリカはテロ対策を強化してきたが、その網の目をくぐるような犯罪だった。アメリカ国内で新たなテロの芽が育ちつつあるということなのだろう。

拒絶される移民…疎外感強めていったボストン爆破兄弟

   キャスターの国谷裕子は「兄弟は10代後半からスポーツジムに通っていたそうです。兄のタメルラン・ツァルナエフ容疑者はボクシングで頭角を現し、将来はアメリカのために、アメリカ代表としてオリンピックに出場することを夢見ていました。しかし、アメリカに馴染めず4年前ぐらいから疎外感を周囲に漏らしていました」と伝えた。

   兄弟の父親はアメリカで自動車修理工として働き、アメリカ国籍の取得を申請したが申請は認められなかった。しかし、兄弟の叔母は「アメリカ国民にならなくて良かった」と喜ぶなど、移民家族を取り巻く親戚関係は複雑だ。兄弟は友人にケガをさせたことなどをきっかけにアメリカに反感を持つようになり、2年前頃から移民問題に消極的なアメリカ議会を批判するようになっていった。

この4年間で新たなテロ42件

   アメリカ国内に住む国民・住民が引き起こすテロは「ホームグロウン・テロ」と呼ばれ、2005年にイギリスのロンドンで起きた同時爆破事件以降、新たなテロの形として警戒されている。外国のテロ組織ではないテロ事件は、アメリカ議会の調査局によると2009年以降に未遂事件も含め42件起きている。

   FBIは国内に潜む新たなテロリストをあぶり出すため、それと思われる人物に爆破計画を持ちかけ逮捕するという手法まで使っている。これに対し、「今回のテロ事件でこれまでの政府のテロ対策は何だったのか」「テロ防止対策はアメリカ国民を分断することにならないか」と危惧する声が出ているという。

   中山俊宏(青山学院大学教授)は「兄弟たちの背景に何らかの組織があるのか、それとも兄弟のアメリカ社会に対する不満による犯行なのかはまだ不明です。アメリカの強圧的な対テロ対策は、ブッシュ政権時代のイラク・アフガン戦争当時から始まり、今のオバマ政権もそれを踏襲しています」と解説する。

   国谷「アメリカの対テロ対策はイスラム教徒を重要視していましたが、国民は慎重でした。今回の事件でこの意識は変わるでしょうか」

   中山教授「アメリカ政府は軌道修正をせざるを得ないと考えているようです。FBIの会見を見ても、できるだけ国内のイスラム教徒を刺激したくないと控えめな表現をしています」

   アメリカの中の格差拡大が大きな背景だろう。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2013年4月22日放送「ボストン爆破事件『新たなテロ』に揺れるアメリカ」)