「ギャップイヤー」が最近注目だそうである。「クローズアップ現代」の定義によれば、「通常のレールから外れ、長期間ボランティアや職業体験などの経験を積む、いわば人生の寄り道」だそうだ。たとえば、高校から大学に進学する際、あるいは大学在学中などに半年、1年の時間を取って、ボランティア、社会体験などをする。レールから外れることで、レール上ではできない多様な経験を積み、自分を見つめ直し、たくましく成長するなどの効果が期待できるという。
スポーツサークル活動に精を出し、キャンパスライフをエンジョイしていたある立教大学4年生は、大学を休学してボルネオ島北部の熱帯雨林地帯で、貧困地区の子どもたちに英語を教える活動をしている。大学生活には「空虚感」があり、大学ではできない経験を求め、どんな環境でも動じない人間になりたいとあえて厳しい環境に飛び込んだ。
今後、こうした「ギャップイヤー」は広まっていくのだろうか。近年、大学でも制度化などが進んでいるそうだが、ギャップイヤーを研究しているという秦由美子・広島大学教授は、その妨げとなっているのが「遠回りを許さない」「空白期間が認められない」日本社会であり、就職活動の不利益などを指摘する。
たしかに、この国の企業では、上の言うことや社に引いてあるレールに疑問を持たず、なんでもハイ!ハイ!と素直に従い、その中でうまくやる人材が大層好まれる。ちょっとレールから外れて、立ち止まって考えてみました、ボランティアやりました、それで成長しました――なんて言う輩はうろんに見られ、懸念を持たれて当然であろう。レールから永遠にサヨナラしたいならそれでもいいが、ギャップイヤー学生の多くはレールに戻りたいようだ。よしんば本人がその際の不利益を気にしなくても、「心配される親御さんも多いですよね」(国谷裕子キャスター)
先の立教大生の事例でも両親はギャップイヤー取得に大反対し、母親は泣いて引き留めたという。今も「はたして、それ(休学)を日本の企業がどれだけ受け入れてくれるのか不安はあります」(母親)と、やはり就職、というか就社の心配は大きいようだ。
もっとも、最近は経団連などでもギャップイヤーを評価しようという動きがある。ただ、日本のウツクしい企業文化を考えれば、ギャップイヤー肯定化などはただのお題目で終わりそうな気がしないでもない。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2013年5月21日放送「人生に寄り道を~今注目の『ギャップイヤー』~」)