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<なるようになるさ。>
橋田壽賀子の書割ワールド、浅野温子の大げさ演技…ああ、しらけ鳥が飛んでいる!薄っぺらドラマじゃ描けんどん詰まりニッポン

   なんだろう、このシラケ感は…。唐突だが、「シーラケ鳥、とーんで行く、南の空へ」という大昔に流行った小松政夫の「しらけ鳥音頭」が頭の中に鳴り響いてしまった。

   橋田壽賀子作品とはどうも相性が悪く、「渡る世間は鬼ばかり」いわゆるワタオニも一度も見たことがなかった。でも18年ぶりの新作連続ドラマだというし、メインキャストも舘ひろし、浅野温子で、今までとは毛色が違うようだし(もっとも泉ピン子は出ているけど)、この際、偏見を捨てて見てみようと思ったんだけど。家庭内のスッタモンダに限定されたやり取りのせいか、主人公夫婦の立派すぎる邸宅のせいか、それともやっぱり浅野温子のオーバーな演技のせいなのか。

   そうなのだ。浅野温子の演技が気になって気になって、見るのがつらくなってしまったのだ。まるで劇場で独り舞台をやっているような大げさな体の動き、表情筋を総動員して力いっぱい動かしているような顔。劇場なら遠くから見るのだから、そういう演技も当然だが、ここはリビングだ。アップも多いし、しかも当節、テレビは大画面でハイビジョンだ。もっと近距離を意識した微妙な動きや表情こそ求められるものだろう。

東日本大震災もなかったような能天気

   W浅野時代(1988年から放送された浅野ゆう子との共演ドラマ「抱きしめたい!」が大ヒット)のバブルを背景にしたトレンディな(ああ、なつかしい死語だ)女がそのまま歳月を経てキャピキャピ(!)のトレンディな主婦になったという理解なのかしら。その後、日本全体を覆った「失われた20年」も東日本大震災もなかったのか? それを乗り越えて元気を出してもらいたいというには、あまりに深みが感じられない。

   と、浅野温子には酷な言葉を並べてしまったが、まじめな話、元凶は橋田脚本にあると思う。人物の造形が書割みたいに薄く、二次元な感じなのだ。ふつう、人間は立体で三次元の存在だよね。ドラマだから、意図的に効果を狙ってそういう人物を作ることは多いけど、橋田ワールドの場合、大真面目にそういう人物しか作っていないみたいだ。

   でも、ワタオニ・ファンにはこういうのが安心できていいのだろうか。そして泉ピン子を接着剤にして、ワタオニ・ファンをそのままここに繋げることができるのだろうか。そこに興味がわく。(TBS系金曜日よる10時~)

(カモノ・ハシ)