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福岡・病院火災「秒速3~5メートルで駆け上がった煙」被害者やけどもなく一酸化中毒死

   福岡市の整形外科医院で入院中の患者ら10人が死亡する火災が起きた。「クローズアップ現代」によれば、亡くなったのはほとんどが70歳以上の高齢者で、死因は一酸化炭素中毒と見られるという。骨折で入院中だった患者の遺族が言う。「遺体を見ても火傷ひとつなかったが、口や鼻の周りが黒くなっていて、煙にまかれたんだと思った」

1階の防火扉閉まっていれば救助間に合った可能性

   火元は建物の1階で、2階の被害がもっとも大きかった。スタジオゲストの関澤愛・東京理科大教授は「一般の人は火事というと火、炎を想像するが、実際に一番怖いのは煙」「上方向には毎秒3~5メートルぐらいの速いスピードで一気に広がる」という。消防隊員が救助に入ったときには、「ライトを照らしても目の前しか見えない」(隊員)ほど煙が充満していた。

   医院の防火・消化設備はどうなっていたのだろうか。初期消火に有効なスプリンクラーは設置されていなかった。ベッド数が19床以下、かつ小面積の医院(診療所)にはスプリンクラーの設置義務はないという。炎や煙を防ぐための防火扉が7つあったが、これがすべて動作しなかった。1階の扉は歪んでいたせいで閉まらなかったらしいという。専門家のシミュレーションでは、この扉が閉まっていれば、犠牲者は消防隊の救助を待つことができた可能性がある。

防火設備の点検義務付けられていなかった福岡

   防災の設備や機能が形骸化して役に立たなかったというのは、災害のあとによく聞く話だが、今回もまたしかりだったようだ。そのウラには「点検」の不備があったようである。この医院の防火扉はじつに30年間も点検が行われていなかったという。防火扉は建築基準法と自治体の管理下にあるが、福岡では、診療所には点検報告が義務づけられてないそうで、「診療所にも点検報告を義務づけるべきだ」(関澤)との指摘がなされた。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2013年10月15日放送「黒煙が高齢者を襲った~検証・福岡 医院火災~」)