アベノミクスでは雇用者のクビを切りやすくし人材の流動化を進めるとしているが、そのためには解雇とあわせて転職もすすめなければならない。そこで政府は雇用への助成を大幅に減らす一方、転職支援に300億円という巨額の助成金をつけることにした。
その「転職」の現状はどうなのか。いま大転職時代を迎えているのが、日本の調子がよかったバブル期に大量採用された世代だという。経済状況および産業構造の変化によって、製造業など成熟産業では人材がだぶついてる。この人たちが医薬品、介護といった成長産業へスムーズに動かさなければならないのだ。
ただ、いざ転職する身になってみれば、将棋の駒のように簡単に左から右へと移動できるものでもない。転職しようにも、それまでの経験、実績を直接生かせる就職先は少ない。受け皿側としても、求めるのは専門性、経験、スキルを持った即戦力である。異分野からの転職者をジェネラルに鷹揚に評価するジェネラスな企業などは少なく、職が見つかっても、安く買いたたかれるのが実情のようだ。
かつて半導体のトップシェアだった電機メーカーで、半導体の仕事をしていたという44歳男性のケースが取り上げられた。会社を早期退職したこの男性は、当初は同業種で職を探したが、長きにわたって見つからない。結局、就職が決まったのは、ゴミ焼却炉や火葬場のメンテナンスをするといういまの「成長産業」の会社だった。収入は以前の半分だが、男性はそれでも「『会社を引っ張ってくれる人をとりたい』ということで、それなら自分も頑張りたい」と前向きに語っていた。
ボンド柳生