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<ネイビーシールズ: チーム6>
「ビン・ラディン暗殺作戦」イスラム原理主義より怖い「アメリカの正義」白人に逆らう奴は殺す

(C)2012 Geronimo Nevada, LLC. All Rights Reserved.
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   9・11同時多発テロの首謀者とされた「アルカイダ」のビン・ラディン暗殺を狙った「ジェロニモ作戦」を実話に基づいて描いたミリタリーアクションだ。『ブルークラッシュ』などのジョン・ストック・ウェルがメガホンを取り、実際に使われた兵器を使い、実際の隊員を起用して撮影された。

「差別はいけない」説教されても空々しさ…

   「これぞアメリカ映画だ!」と製作側の自賛が画面に充満している。アクションを知り尽くしたカットの羅列は迫力がある。しかし、観客がそのように受け取るかは疑問だ。アメリカが「世界の警察」であることが前提になっていて、その視点で見たイスラムは原理主義に支配された凶悪な連中で、戦火に巻き込まれる庶民の存在は無視される。

   イスラム原理主義がテロリストを生み、目的の為には手段を選ばない危険思想が「正義」になってしまうとこの映画は熱弁を振っているのだが、アメリカの「正義」もアメリカ原理主義というべき偏狭さの裏返しに過ぎない。

   イデオロギーによる差別をしてはならないと観客に訴えるシーンがある。そして「それは戦地では戯言なのさ」と展開されていくくだりは、ベトナム戦争を題材にした映画で散々やりつくされてるうえに説教臭い。説明のくどさはもはやプロパガンダ映画である。

本物の将兵や武器使った「リアル映像」にもうそ臭さ

   製作側もさすがによくある戦争映画から脱却を図ろうとしているようで、本物の隊員と兵器によって「リアルな戦争体験」を提供しようとしている。その苦労と資金の豊富さはビンビン伝わってくるが、どうにもリアルが「リアリティ」に飛躍しない。アメリカ側から描いている一方通行感が日常を奪ってしまうからだろう。

   「ジェロニモ作戦」という暗号名にアメリカの正義の本質が透けて見える。先住民の指導者名を付けたということは、白人に抵抗する者は殺すというアメリカの歴史、アメリカの哲学の一貫した価値観の表れなのかもしれない。

   もはや酷評することもない。ミリタリー好きには見ごたえ十分な映画であるし、アクションシーンの撮り方は秀逸だ。「世界は安全になった。ビンラディンの死によってよりよい場所になった」という大統領の演説を疑わぬアメリカらしいアメリカ映画なのだから、難しく考えることもないか。

丸輪太郎

おススメ度☆☆