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オープンデータ遅れる日本!お上意識で情報出し渋り―米国の警察は積極的公開で犯罪激減

   国や自治体に蓄積された多種多様な膨大なデータを使いやすい形で公開し、民間でビジネスに活用する動きが世界60か国以上で進んでいる。5年前から行政データの公開を始めたアメリカでは、オープンデータはすでに40万件に達しており、このオープンデータの活用でできたビジネスは500件以上にのぼっている。

   その目覚ましい成果の一つが、警察の犯罪データを取り込んで独自の解析法で犯罪予測を行い、犯罪防止に役立てている取り組みだ。アメリカの警察はいつどこでどんな犯罪が起きたかのデータを公開している。犯罪データは1つの警察署で数百万件に達するという。このデータをもとに社員40人のITベンチャー企業が解析法を開発した。その地域で再び起こりそうな犯罪の種類を浮かび上がらせ、150メートル四方でその日に発生する可能性が高い犯罪を予測できるシステムだ。

   このサービスを全米各州の警察が導入して、犯罪予測に基づいて重点パトロールした結果、犯罪の発生件数が著しく減少したという。イギリスや南米の警察もこのシステムの導入契約を交わしている。

   開発した犯罪予測システム会社のCEOのラリー・サミュエルズはこう話す。「300~400%の成長を続けています。来年は積極的に海外事業を拡大するつもりで、さらなる発展が期待できます。こうした成功にはオープンデータは必要不可欠です」と強調する。

厚労省のデータをベンチャー企業が加工!30分で探せるようになった希望介護施設

   これに対し、日本では情報の出し惜しみという伝統的なお上意識もあって、行政データの公開は進んでおらず、使い勝手の悪さもあって民間の活用は遅れているのが現状だ。そんな中で、「クローズアップ現代」が成功例として取り上げたのが、介護ベンチャー企業の開発した介護施設の情報提供サービスだ。厚生労働省の全国の介護施設データをベースに、各施設の介護サービスの内容や空き状況など180項目のきめ細かい情報を加えた。

   福岡市でケアマネージャーの活動をしている永田やよいさんはさっそく利用した。介護を必要としている人や家族の相談に乗り、これまでは希望の条件に合う施設やサービスを手作業で探していた。条件に合う施設を探すのに丸3日もかかることもあった。それがこのサービスのおかげ30分と大幅に短縮し、家族の介護の負担を軽くすることができたという。

   ただ、日本では眠っていた行政データを掘り起し、新たなサービスとして活用する取り組みはまだ始まったばかりだ。

「介護施設のほかにオープンデータでよく使われているものはどんなものがあるのでしょうか」

国や自治体のデータはみんなのもの...公開だけでなく活用できる必要

   国谷裕子キャスターが国際大学グローバルコミュニケーションセンターの庄司昌彦主任研究員に聞いた。「ゴミ出しアプリが広がっています。これは行政に対する問い合わせの中でゴミに関するものが一番多いんですね。どのゴミをどう分類しいつ出せばいいか。どの地域にいつゴミ収集車が来るか。行政が提供した情報をもとに、民間が素晴らしいアプリをつくって提供しました。非常に使いやすいといろんな地域で広がっています」

   国谷「オープンデータを活用してサービスを提供しようという企業は日本全体でどのくらいあるのでしょうか」

   庄司主任「オープンデータを使って地域の課題を解決しようとか、ビジネスを創設しようという狙いで世界から参加し行われる『インターナショナル・オープンデータ・ディ』という祭りがありますが、日本での開催の数は世界で2番目に多いんです。民間でチャレンジしようという機運は高まっていると思います」

   国谷「ただ、国や自治体から提供されるデータは少ないといわれています。行政側の取り組みに対する課題は何ですか」

   庄司主任「まずオープンという言葉に関する認識を変えていく必要があります。ここで言うオープンデータは、単に見せるだけでなく、自由に使え、編集加工し活用できる公共財という認識を持ってもらうことが必要です。

   そもそも(自治体には)データはみなのものという発想になっていないし、自治体ごとに形式がバラバラ。全国規模で活用できるように情報の取り方、形式を揃える必要があります」

   まずは初歩的な行政データの作り方から始めないとオープンデータの全国レベルでの活用などどだいムリというわけか。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2014年9月17日放送「公共データは宝の山~社会を変えるか?オープンデータ~」)