1回目を見たある友人が号泣したそうだ。もちろん感動のあまりである。「まさか、バカリズム(脚本)に泣かされるとは...」と言っていた。
私はまあまあバカリズムのお手並み拝見程度にしか思わなかったけど。バカリズムが脚本に起用されたのは、「世にも奇妙な物語」の1本を書いたのが評価されたらしい。たしか天国の不動産屋の話で、なかなか面白かった。そう言えば、このドラマとテイストが似ている。
人生は日々さまざまな選択肢の連続である。誰でも、あの時に別の選択をすればよかったと思うことはある。乗客を過去に戻せる不思議なタクシーという着想が、平凡なような非凡なような、ダメとはいえないけど素晴らしいとはとてもいえない。というわけで、「選TAXI」というベタなダジャレも含めてバカリズムらしいとしか言いようがない。この絶妙さが彼の才能を示している。
その名も枝分(えだわかれ)という運転手の役を演じる竹野内豊が、無表情な特長を生かして独特の味を出している。あそこまで二枚目を封印するのもたいへんだろうな。油っぽい髪、似合わないヒゲに、よくある青色のチョッキとズボンの制服姿。どこからどう見ても冴えないオッサンである。
いつも立ち寄るカフェのマスター(バカリズム)、ウェイトレス(南沢奈央、清野菜名)、常連客(升毅)らと枝分とのやり取りのチグハグさが、まったりしていて和む。さらに、店のテレビではいつも刑事で犯人という男が主人公のふざけたドラマ「犯罪刑事」をやっているというアソビも入って、余裕、余裕。これに毎回のゲストが「過去に戻って選択し直したい」事情を持った役で出てくるというわけだ。
1回目を見た時には、世にも奇妙な物語という単発ならいいけど、この設定で10回もの連ドラは苦しいんじゃないかなあと思ったけど、2回目を見て、いやいや、なかなかいけるぞと思い直した。ハッピーエンドという収め方もほっこりさせてくれる。
私にも選択し直したいことはある。でもでも、このタクシーの料金はとっても高い。だから、ドラマでは1~3時間ぐらいしか戻っていない。私が戻りたいのは18歳の時だから、何十億円かかるかわからない。たとえ、実際にこのタクシーがあったにしても無理だ。(火曜日よる10時~)
(カモノ・ハシ)