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口永良部島「ふきこぼれ火砕流」時速140キロ!寸前で直撃免れた住民たち

   日本列島の地下で何かが起きているのか。神奈川県の箱根山では火山性の地震が頻発し、鹿児島県桜島は今年に入って爆発的噴火を600も繰り返し、先週金曜日(2015年5月29日)には鹿児島県・口永良部島の新岳でも爆発的噴火があった。

   住民のほとんどは2時間後に避難場所に駆け込み、幸い犠牲者は一人も出なかったが、噴火を詳しく分析すると大規模な「火砕流」が発生していて、住民は危機一髪だった。

「砂のようなものがザーッとこすれる音がして一気に流れてきました」

   火砕流は火山灰、噴石、火山ガスが一体となったもので、口永良部島の噴火では火口からあらゆる方向に流れ出し島の2割が覆われた。火砕流が目前に迫った地区もあった。火口から2キロの前田地区だ。2年前から口永良部島を調査している測量会社の火山防災課長・新井健一さんが言う。

「(今回のような)『噴きこぼれ型』の火砕流は噴火と同時に発生します。しかもかなり早いスピードで流れていく。避難までの時間に一気に集落まで到達してしまうかもしれないタイプでした」

   調査結果をもとに火砕流がどのように前田地区に迫ったのか再現したところ、火口から谷伝いに流れる火砕流の時速は最大で140キロ。噴火から1分あまりで前田地区から200メートルまで迫っていたことがわかった。火砕流を真近で見ていた消防団員の貴舩森さんはこう証言する。

「すさまじいドーンという音がした直後、砂のようなものがザーッとこすれる音がして、火砕流が一気に流れてきました。体が硬直して、ただ見てるだけでした。私の家から100メートル先の家は灰をかぶってもう真っ白。すべてが灰色の世界で、目の前の映像は怖かったです」

   一人の犠牲者も出なかったのは、前田地区のすぐ手前で谷が一部狭くなっていて、そこに火山灰が溜まって火砕流がせき止められたためだった。

高温のガスや土ぼこりが駆け下り、巻き込まれたら一瞬で焼死

   火山噴火予知連絡会副会長で京都大学名誉教授の石原和弘さんこう警告する。

「火砕流というのは、本体は溶岩や軽石なんですけど、そこから高温のガスが噴き出すわけです。本体は小さいですけど、周辺のところが熱いわけですね。高温の雲のようなもの。これに巻き込まれたら一瞬のうちに命を落としてしまいます。運が良くても大やけどを負うことになるでしょう」

   国谷裕子キャスター「(昨年8月の噴火以来)半径2キロが立ち入り禁止になっていましたが、その効果もあったのでしょうか」

   石原副会長「なんとかギリギリおさまったということじゃないでしょうか。ただ、注意が必要なのは、今回で前田地区に流れる火砕流をせき止めた谷はすでに埋まっているということです。次に同じ規模の火砕流が発生したら、これを越してくる。現在の状況を踏まえたハザードマップの見直し、それに基づいた避難計画を考えなきゃいけないと思います」

   せき止められていなければ前田地区は全滅していた。幸運だったとしか言いようがない。

NHKクローズアップ現代(2015年6月1日放送「間近に迫った火砕流~緊急報告 口永良部島噴火~」)