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プライベート電話も警察に筒抜け?「通信傍受法改正案」対象犯罪を一挙に拡大

   振り込め詐欺撲滅のキメ手として政府が法改正で目指している通信傍受の拡大について、野村修也・中央大法科大学院教授が『くらしに役立つみんなの法律』コーナーで解説した。

   振り込め詐欺など特殊詐欺事件で捕まるのは、インターネットの闇サイトで集めた末端の「受け子」ばかりで、大元の組織にたどり着くケーズはまれだ。そこで、振り込め詐欺などの電話を警察が傍受できるようにしようというのが通信傍受法の改正案である。

   通信傍受法は組織犯罪の撲滅を狙いにつくられた法律で、現行制度で通信傍受できる対象は暴力団関係者が絡む薬物や組織的殺人、銃器売買、集団密航の4つの犯罪に限られている。改正案はこの4つに加え、窃盗、詐欺、殺人、傷害、放火、誘拐、監禁、爆発物、児童ポルノの9つの犯罪にも傍受を認めようというもの。司会の夏目三久も「ずいぶん広がりますねえ」と驚く。

通信業者の立ち会いもなし

   現行制度では、警察官が傍受をする際は通信業者の立ち会いが必要とされているが、改正案では通信業者の立ち会いを廃止し、通信データを暗号化して伝送して警察署内でいつでも自由に傍受できるようにしている。

   果たしてこれで国民のプライバシーは守られるのか。東京都内で街の声を聞いたところ、やはりこんな疑問が返ってきた。「それってちょっと変よね。一般の人たちの電話を傍受できるじゃないですか」「あらゆる情報を傍受して、監視されるのはちょっとどうなのかなと思う」

   野村教授は「全体に対象が広がり過ぎではないか、組織的な詐欺事件に限るべきではないかという意見が強かったんですが、最初から組織的詐欺を証明するのは難しいと(対象が)広がりました」という。

納得できますか政府説明「必要なところしか聞かないから大丈夫」

   野村教授が「とくに注目すべき点」としているのは、通信業者の立ち会いを廃止する傍受の仕方だ。「やはり第三者(通信業者)が見ているという心理的プレッシャーがなくなって大丈夫なのかという声が出ています」

   政府は警察に送られた通信データは暗号化され、どこを聞いたかはデータとして残るうえ、聞いていない部分は暗号化されたまま廃棄されるので安全だとしている。しかし、全部聞かなければ犯罪が証明できないと言われればそれまでだ。

   野村教授「冤罪が起きているのに、傍受だけ間違いなくできるというのは疑問だという声があります。捜査全般に対する健全性を回復することが通信傍受の前提になります」