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この秋もサンマが高い!日本沿岸近づく前に台湾・中国の巨大漁船が乱獲

   秋の味覚・サンマの値段がここ5年間で3割も上昇している。要因の一つと見られるのが、巨大な外国漁船によるサンマ漁である。日本の排他的経済水域のすぐ外側の公海で、日本に来る前のサンマを『先獲り』してしまうのだ。ならば、「日本も公海に出ていけば」と思うが、日本は鮮度を重視するため、近海でしか漁をしない。かつては船いっぱいに獲れていたサンマが、今は4分の1程度という。

   漁師からは「もうサンマの時代は終わった」などの声が出ている。

1000トンの船・100メートルの網で一網打尽・・・排他的経済水域外側の公海

   台湾は公海でのサンマ争奪戦で最大の漁獲量を上げている。全長70メートル、総トン数1000トン、日本の一般的なサンマ漁船の50倍の大きな船で操業している。こうした船は台湾全体で90隻以上もあるという。漁獲量も年々増えていて、昨年(2014年)はついに日本を抜き、およそ23万トンに達した。

   船の建造費は1隻が日本円で14億円ほどで、集魚灯や魚群探知機など主要な装備はいずれも日本製だが、日本のサンマ漁船にはない装備があった。最大で850トン保管することができる巨大な「冷凍庫」だ。さらに冷凍庫がいっぱいになると台湾から運搬船がやってきて、サンマを次々に回収するサイクルが出来上がっている。漁船はおよそ半年間、1度も港に戻らず操業することができるという。

   10隻以上の漁船を所有する台湾有数の水産会社の黄一成副会長はこう話す。「10隻はすべて北太平洋のサンマを獲りに行く船です。私は北太平洋の公海でサンマ漁を行う船を年々増やしてきました。公海でのサンマ漁の将来は明るいと確信しています」

   最近は中国も日本沖のサンマ漁に参入してきた。これまでは台湾からの輸入で頼っていたが、今は中国各地でサンマ漁船の建造を急ピッチで進めていて、この3年間で1000トンクラスの船を44隻完成させた。今年はさらに十数隻造る予定だ。漁獲量も数年後には台湾に迫るとみられている。

   こうした動きの背景には中国政府の示した新たな方針がある。2年前に出された公文書にはこうあった。「近海での過度の漁獲と環境汚染を避けるため、今後は外海を開拓し、遠洋を発展させる」

   クローズアップ現代が日本の排他的経済水域のすぐ外側で操業する中国の新型巨大漁船を初めてカメラでとらえた。長さ50メートルを超えるアームを四方に伸ばして、幅100メートルを超える巨大な網を広げ、サンマばかりかサバやイカなどを、それこそ一網打尽にする。もう漁というより、海の上の巨大工場のようだ。

漁獲制限呼び掛けに難色

   国谷裕子キャスター「このままでは資源が枯渇してしまうという不安の声が上がるなかで、日本はサンマ漁に関して国際的なルール作りを始めました」

   今月3日(2015年)、日本、台湾、中国、カナダ、ロシア、韓国など7つの国・地域の代表が東京に集まった。今年発足した「北太平洋漁業委員会」の初会合だ。呼び掛けたのは日本の水産庁で、会議では「今後、サンマ漁船を急激に増やさないこと」では合意したが、日本が主導しようとする「漁獲量の上限」については「さらに2年以上かけて議論していく」となった。

   これまで数々の水産交渉に携わってきた宮原正典さん(水産総合研究センター理事長)は漁獲制限の見通しをこう解説する。「このままだと本当に資源が枯渇するのか、違法な漁獲はやってないのかどうかなど、事実をキチっと突きつけていくことが大事だと思います」

   サンマを塩焼きや刺し身で食べる日本や韓国と違って、冷凍にして加工食品にする国が漁獲制限に乗って来るかどうか。交渉は難航しそうだ。

*NHKクローズアップ現代(2015年9月7日放送「サンマ争奪戦~どう守る『日本の秋の味覚』」)