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COP21で槍玉か?日本の「石炭火力発電」増設ラッシュ!アメリカは再生可能エネルギーに大幅シフト

   地球温暖化を考えるシリーズ第2回は、CO2削減のカギを握る「石炭」だ。いまCO2の排出量は年間約300億トンで、その3割が石炭火力発電から出る。天然ガス発電の2倍だ。この石炭火力をめぐる日米の動きが対照的で、これを追うと問題点が見えてくる。

   アメリカが京都議定書にそっぽを向いた主たる理由が石炭だった。消費量が大きすぎて対応できなかったのだ。そのアメリカがいま変わろうとしている。

オバマ政権「風力や太陽光発電に5兆円投資」

   オバマ政権は8月(2015年)、新たな温室効果ガス削減策「クリーンパワープラン」を打ち出した。25年までに05年比で26~28%削減するという目標を掲げた。石炭から再生可能エネルギーへの大幅なシフトだ。石炭に変わるものを見つけたのである。

   オバマ大統領は「アメリカが初めて発電所のCO2を規制する。クリーンな未来への移行を加速させる」と話した。政府は2年間で5兆円を再生可能エネルギーに投資し、これを次の成長産業に育成しようとしている。石炭火力発電規制の動きは全米で加速する。

   テキサス州の州都オースティンは人口100万人。電力の4分の1が石炭火力だが、7年後に廃止し、将来はゼロにすると宣言した。日照時間が長く、土地は広大だ。風力や太陽光発電への投資を進め、大規模化も図った結果、5年前に比べて7割ものコストダウンを実現した。弱点といわれた供給の不安定は、IT技術で克服した。不足を予測し、発電量を融通し合うことで安定した。太陽光発電の普及は予想以上で、来年には市の電力の半分は賄えるという。業界は大きな産業に成長した。まさに政府の青写真通りだ。

   アメリカの大胆な転換について、名古屋大学大学院の高村ゆかり教授は「背景にはシェール革命がある」という。開発の加速でシェールガスは天然ガスの価格にまで下がった。太陽光発電も14年までの4年間で50%下がって、石油火力発電並みになった。これが歴代政権ができな かった「石炭離れ」を可能にした。

   GDPあたりの温室効果ガス排出のグラフを見ると、1990年代の日本はトップランナー(断然低い)だった。以後、下げ止まりが続くなか、13年にはEUが日本に追いついた。アメリカはなお日本の1・5倍もあるが、削減を一気に加速する態勢に入った。

丸川環境相「増設続けばCO2削減目標守れない」

   さて、日本だ。来週30日(2015年11月)からパリで開かれる気候変動枠組み条約の締約国会議COP21に向けて、日本政府は30年までに温室効果ガスを13年比で26%削減を打ち出した。しかし、これがややこしいことになっている。来年(2016年)4月の電力小売り自由化だ。他業種の参入で熾烈な価格競争が予想されるが、ここで石油火力の3分の1とコストの安い石炭火力が浮上した。全国でいま少なくとも40の建設計画が出ている。コストは安くても、CO2の排出量は20%増える。

   たまりかねた丸川環境相は「40基が稼働したら温室効果ガスの排出量の目標は守れない。現段階では是認できない」とけん制した。しかし、推進する経済産業省は設備の改良と最新技術の活用で両立は可能という。福島原発事故で止まった原発を補うために、現実に石炭火力は復活しているし、90年代から石炭の使用は増えている。

   さらにややこしいことに、政府は途上国への石炭火力発電所の輸出を進める。途上国はコストが安いことが最優先だ。インドネシアでは、すでにいくつもの石炭火力発電所が日本商社が受注してつくられている。徳島・阿南の最新設備は途上国からの見学が絶えない。広島では次世代の石炭ガス化のプラントもテスト中である。排出ガスは天然ガス発電に近くなるという。

   日本の動きは何ともチグハグである。OECDなどの目も厳しいらしい。高村教授は「石炭火力はエネルギーの使い方を考える上での問題提起になると思います」という。うーむ、わかったような、わからんような。

*NHKクローズアップ現代(2015年11月26日放送「シリーズ瀬戸際の温暖化対策②『石炭』めぐる攻防」)