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プレゼン力高ければ仕事は来るか?メディアはじめチヤホヤ、たちまち使い捨て

   インドの少数民族による手編みカゴ。むげん堂のような世界の民芸品を売る店では、無造作に重ねられ200円のシールが張られて売られている。かたや、シボーネのようなオシャレでハイセンスなセレクトショップでは、棚に飾られ3500円のタグが付けられている。そして、200円の民芸店も、3500円の方も売れる。3500円の店ではカゴをどういうふうに置けば部屋全体がオシャレな雰囲気になるかわかるからだ。ちょっとしたレイアウトの仕方で商品の価値が跳ね上がる。言い換えれば、プレゼンの仕方によっていかようにも値段を変えることはできる。

ちょっと肩書き目新しくするだけで・・・

   これ、どんな仕事でも言える。プレゼン能力を持っていると、たいしたことをしていなくても、職業として立派に成り立ってしまう場合がある。単なるフリーランスなのに、ノマドワーカーと名乗って注目されたり、他人のもめごとの解決が得意だったらとコミュニケーターを肩書きに、過疎化に悩む地方自治体から依頼を受けたり、昔はおばあちゃんに聞けば美味しい漬物の作り方ぐらい教えてもらえたのに、いまはライフスタイリストとして著書をバカみたいに売ることもできる。こうしたプレゼン能力を鍛えるために、プレゼン講師なる職業だってある。

   「ああ、私たちももう少しプレゼン能力が高かったらねえ、アハハ」とむなしく笑いあったのは、旅行ライターの友人だ。雑誌を中心に20年近く第一線で活躍している彼女は、地道に取材を重ね、露出するメディアを探すタイプだ。現地に出向くことが信条で、体を張って世界各地の『今』やホテル・旅行業界の動向を伝えるので、雑誌業界では高い信頼を得ている。

   ところが、若い世代に人気なのは、現地には行かず他人が書いた記事から情報を集め、他人が撮った写真を許可取りせずにSNSにアップして旅行情報を伝えるスタイルだ。これに大手旅行会社が乗ってパッケージ商品にまでなっているのだから、何が正しいのかわからない。これもプレゼン能力の高さってことなのかしらねと彼女はこぼす。

すぐはがれる化けの皮

   そうだそうだ、とうなずきながらもチョイと反省。プレゼン能力が高くて、PRリリースが上手なところほどメディアは手をつけがちだ。知らない単語をつけた肩書きを名乗る人、シンプルなライフスタイルという価値観を提示する人、インスタグラムに美しい画像と気の利いたコメントを添えて1日に何度も情報をアップする人とかね。

   でも、実は凡庸なシェフだったり、単なる掃除好き、画像は加工されまくったものだったりというようなことは多い。話がおもしろいというのは、プレゼン能力の高さだものね。と、また友人とカラカラと笑いあってその場をしのいだ。

モジョっこ