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チケット「転売ヤー」に打つ手なし!取締りは穴だらけ、高額でも欲しがる熱狂ファン

   人気のスポーツ、コンサート、レジャー施設のチケットを買い占め高額で転売する悪質な行為がネット上で横行している。12日(2016年10月)から始まったプロ野球のファイナルステージ広島-DeNA戦のプレミアムテラスと呼ばれるエリア席は、定価3万6000円がネットの転売サイトで30万円で売られていた。昔からダフ屋といわれる悪質な行為だが、このまま放置すれば正直にチケットを求める本当のファンが締め出されることになりかねない。誰がどういう方法で買い占め、高値で転売するのか。

「嵐」9000円→30万円、「宝塚」1万2000円→50万円

   新手のダフ屋は「転売ヤー」と呼ばれている。野球に限らず、人気アイドルグループ「嵐」のチケット定価9000円が30万円、宝塚のチケット1万2000円がなんと50万円だ。高値転売に反対する著名なミュージシャンらが8月下旬、新聞の1面を使って「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」という声明を出した。

   日本最大手のチケット販売代理店「ぴあライブ・エンタテイメント事務局」は買い占めの手口を次のように話す。

「チケットは朝10時からの販売になるので、9時59分59秒からずっと継続して不正なアクセスが入ってきます。不正ユーザーは専用のプログラムを作っているんです。普通の入力では不可能だと思います」

   ある不正ユーザーは専用のプログラムを使い、1秒間に30回もアクセスを行ってきた。最近は、人気アイドルグループのファンが複数の名義を使って購入したチケットを転売し、稼いだ金でより高い席の購入資金に充てている。それが10代のファンにまで広がっているという。

   キャスターの鎌倉千秋「こうした転売ヤーの違法性、取り締まりはどうなっているのでしょうか」

   弁護士の福井健策氏は取り締まりがはかどらない事情を次のように答えた。

「2つの法律が関係してきます。1つは都道府県の迷惑防止条例。これは駅や道路など公共の場所でうろつき、チケットを転売する行為を禁止しています。ただ、ネットは公共の場なのかというと不明瞭で、ちょっとグレー。もう1つは古物営業法。購入したチケットは中古品となり古物にあたります。古物を営業として転売するには許可が必要ですが、どこからが営業か判断が難しいんです」

ニューヨークは定価超えた売買すべて違法

   最近は、悪質な転売ヤーが古物営業法違反の疑いで札幌中央署に逮捕されるケースも出てきた。香川県善通寺市に住む25歳の女で、嵐のチケット5枚を1枚7万円で札幌市内の女性ら3人にネット上で転売していた。女はおととし(2014年)10月ごろからチケット300枚を高額転売し、約1000万円を荒稼ぎしていた疑いも持たれている。

   多くの人が買い占めによる高額転売が犯罪であるという感覚がないらしい。「クローズアップ現代+」に視聴者から「欲しい人と売りたい人がいるから成り立つ。周りがとやかく言う問題ではない」といった意見が多く寄せられたという。特殊な操作でチケットを買い占め何十倍もの高値で売る。自由で公平な市場取引とはとても言えない立派な不正行為だが、法律が追い付ていけない。

   福井弁護士は「ニューヨークみたいに定価を超えた転売はすべて法律違反にするなど対策が必要だ」と強調する。

モンブラン

NHKクローズアップ現代+(2016年10月12日放送「追跡!チケット高額転売の舞台ウラ」)