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なんて能天気な株価予想...週刊現代「株」関係者に先行き聞く愚かさ、週刊ポストは「棚ぼたバブル」信じ4万円説

   今週は週刊現代が月曜日(450円)、週刊ポストが水曜日発売(480円)でともに合併号。週刊新潮も合併号(430円)で水曜日発売だが、週刊文春は木曜日発売で平週号(400円)、28日に合併号を出すという変則発売。週刊現代は31日に「Special   日本人の幸せ」を定価500円で出すそうだ。

   週刊現代の巻頭は恒例の「2017年大予測」。「株価は8月に2万5000円を超える」がトップ。週刊ポストの巻頭はさらに上を行く「日経平均は4万円へ!」とぶち上げた。

   週刊現代は少し前までは株高懐疑派ではなかったか?   そう思いながら読み始めたが、冒頭の「2017年は日本の投資家にとって明るい年になるでしょう」というところで躓いてしまった。

   野村證券の永井浩二社長の言葉である。失礼ないい方になるが、野村といえば「株屋」の親玉ではないか。

   株の先行きを占うのに、なぜ株屋に聞くのか、その神経が私にはわからない。

   続いて投資顧問会社の運用部長、マーケットアナリストと、株で飯を食っている連中が登場して、景気のいい話をぶち上げている。

   株屋は投資家が株の売買をしてくれれば手数料が入る。株が上がるかもしれないという期待感を投資家が持てば、投資顧問やアナリストの話を聞きに行くかもしれない。

   昔、バブルの時、私の友人で経済雑誌にいる人間や評論家は、証券会社が開催する株の講演会に引っ張りだこだった。

   終わって、彼らと銀座の飲み屋で待ち合わせて深酒したが、彼らの多くは自分で株を買わなかった。

   なぜ買わないのかと聞くと、オレのいっていることは嘘八百、今の株なんて危なくて買えないよ、そういっていた。

   自分で株を買っていた人間は、バブルが弾けて多くが行方知れずになった。

   そんなものなのである。株がどうなるのかを聞く場合は、株に利害のある人間から聞いてはいけない、これが原則であるはずだ。

日本中心の世界観に立つ週刊ポスト

   週刊ポストのほうは、これからの世界の出来事は日本経済にすべて有利に働くという見立て。この「棚ぼたバブル」を信じるものだけが救われるというのだから、怪しげな新興宗教のようである。

   その理由の一つはトランプの政策にあるという。10年間で6兆ドルの大型減税、550億ドルの公共事業、大幅な規制緩和をやるから、「インフラ投資は経済効果が高い上に、法人税を大胆に引き下げれば世界から企業が米国に集まる。雇用は大幅に拡大し、米国の産業は劇的に甦る可能性が高い」(埼玉学園大学経済経営学部の相沢幸悦教授)のだそうだ。

   それだけではない。中国の人民元切り下げで中国マネーが日本に流れ込む、韓国サムスンの凋落で日本の電器メーカーが復活する、EU離脱ドミノでライバルのドイツ経済は凋落し、原油高でオイルマネーも日本へ向かうと、いいことだらけだそうだ。

   それにバブルの頃より資金がだぶついているから、政策次第では株価4万円も夢ではないというのである。

   まあ、新しい年を迎えるのだから、少しぐらい夢を見てもいいとは思うが、どうしたらここまで脳天気になれるのか、本文を読んでも私には理解できない。

   年末年始に仕込んでおくべき爆騰銘柄15というのも出ているから、カネが有り余っていて捨ててもいいという人はご覧あれ。

「トランプ公約は頓挫」とニューズウィーク

   私はニューズウィーク日本版が報じているほうに、真実味があると思う。

   FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長が下した金利引き上げと、トランプ政権で実施される大型減税、公共事業や国防費増が財政規律のタガを外して、インフレと国債の発行額が増えていくであろうと読む。

   トランプと共和党は財政赤字など意に介さないだろうから、金利が上がり、新規の国債も利回りが高めに設定されるはずだ。そうなれば、「減税したり、橋を架けたり、復員軍人の医療費に回したりするはずのカネが利払いですっかり喰われてしまう」(ニューズ)から、トランプの公約の多くは前途を阻まれるかもしれないというのである。

   そうなれば「豊富な破産経験」のあるトランプの経験が生きてくると皮肉っている。

   その上、アベノミクスの理論上の師であった米イエール大学の浜田宏一名誉教授までが、文藝春秋1月号に寄稿して、「昨年末から量的、質的緩和政策は頭打ちになっていると思える」と、行き詰まりを明かし、「"自分の考える枠組みに変化が""金融政策だけではうまくいかない。財政とセットでいかないと"と、その限界をはっきり認めてしまったのである」(週刊新潮)

   黒田日銀総裁もインフレ目標の達成時期を自らの任期の後にした。敗北宣言である。

   株価が2万だ3万だと上がる要件は、ほとんどないと考えておいたほうがいい。株屋の口車に乗せられてはいけない。これがバブルの教訓である。

プーチン置き土産の罠

   口車といえば、プーチンの思わせぶりによろめいた安倍首相がプーチンを訪日させたが、メディアは「日ロ首脳会談 あまりに大きな隔たり」(朝日新聞)「進展見られず」(読売新聞)「『引き分け』より後退か」(産経新聞)と酷評ばかりである。

   週刊新潮で北大名誉教授の木村汎氏もこういっている。

「日本にとって99%敗北。元島民の北方領土への自由訪問が広がりそうなことだけは1%分評価できます」

   週刊新潮によれば、唯一の成果といわれる「北方4島に日本企業も進出できるようになる、共同経済活動案」にも乗り越えるには厳しすぎる障壁があるとしている。

   現在北方4島には約1万7000人のロシア人が居住しているというが、ロシア極東事情に詳しいジャーナリストはこう話す。

「ウラジオストックから運ばれてくる麻薬が蔓延しています。ロシア本土より監視の目が緩いことから格好の取引場所になっており、密売人たちに重宝がられているためです。また、択捉島にあるロシア軍基地から横流しされた武器を市民が所有していて、それを使っての犯罪も横行。道路事情も悪く、悲惨な交通事故が地元紙の紙面をよく飾っています。警察などの役人たちの間では、横領や賄賂が常習化しています」

   こうした治安の悪さとともに、日ロ双方が主権を訴えている北方4島では、もし日本人が罪を犯した場合、どちらの法律で裁くのかなどの難しさもある。

   プーチンの好きな柔道には「柔よく剛を制す」という言葉があるが、今回は剛の前に軟弱な安倍があえなく投げ飛ばされたということであろう。

北方領土に「カジノ建設」説も

   だが、安倍首相は投げ飛ばされただけではなく、プーチンにとんでもないお土産まで貢いだと週刊現代は報じている。

「安倍晋三首相は、北方領土の共同経済活動という名のもとで、カジノ建設を狙っています。それをトップ同士で詰めることが、プーチン大統領をわざわざ故郷山口まで招待した大きな目的の一つだったと思われます」(中村逸郎筑波大学教授)

   中村教授がいうには、トランプとプーチンの共通の友人の一人がロシア人のヴェルホフスキー上院議員で「北方領土の帝王」という異名を持っているという。

   その人間が抱いている野望が「北方領土にカジノ建設」だそうなのだ。

   わずか6時間の審議で通したカジノ法案だが、日本でカジノを開いてもうまくいかないと、井川意高元大王製紙会長(52)がいっている。

   彼は、カジノで負けた借金106億円を返済するために関連会社から不正にカネを借り入れ、特別背任で逮捕されたが、3年2カ月服役して12月14日に仮出所した。

   井川氏が週刊新潮にこう話している。大勢の人がバカラなどに興じるカジノは、掛け金は1回1000円単位と少額で儲からない。

「カジノが儲けを出している場所は、過去に私がハマったように、人目につかない個室。そこで億単位でやってくれる顧客がいて、黒字を出すのです。そういったVIPの扱いに日本人は慣れていない」

   日本のVIPや欧米人は米国や欧州のカジノを好むため日本には来ないという。

   では中国人のVIP相手で稼ぐことはできるのか。

「彼らは基本的に手ぶらで来ます。最初遊んで、ある程度信用ができれば、カジノは20億円ぐらいは平気で貸す。そこで問題になるのは、彼らが負けた場合、日本人が中国まで取り立てに行かなければならなくなることです。(中略)カジノで遊ぶ中国の有力者は、地元の警察やらを全て押さえていますからね。日本人が返済を迫ったところで相手にされません。安倍総理は、そういう取り立てのリスクをどこまで考えているか疑問です」

   さすがに説得力のあるいい方である。カジノのカネを返さないことが発端で日中戦争が再び起こるかもしれない。

「小池都知事にブラックマネー」と週刊新潮

   同じ週刊新潮が、一見クリーンに見える小池都知事だが、闇の高利貸しからブラックマネーが流れ込んでいたと追及している。

   この男(82)は、小池の衆議院時代の地元、東京・池袋で闇金を営んでいたそうだ。

   その男の息子がこう告白している。父親は池袋に本拠を置く暴力団の会長と親しかったそうだ。

   12年にホテルオークラで開かれた小池の「議員在職20年を祝う会」の2万円のパーティ券を父親は100枚買った。

   13年に行われた出版記念パーティでも、やはり2万円の券を100枚。だが、小池の資金管理団体「フォーラム・ユーリカ」の政治資金収支報告書のどこを探しても記載されていないと新潮はいう。

   さらに政治資金規正法には1回のパーティ券売買の上限を150万円と定めている。2回ともそれを超えているため記載しなかったのか。

   だが20万円を超えるパーティ券を購入した人間の氏名住所も記載しなければならないのに、それも見当たらないというのである。

   神戸学院大学の上脇博之教授がこう指摘する。

「上限に引っ掛かったから記載しなかったという故意性が疑われ、単なる記載ミスに比べて悪質です。このケースは、上限違反よりも罰則が厳しい不記載に問われると考えられる」

   罰則は5年以下の禁固または100万円の罰金。

「しかも、小池さんがパーティ券購入を持ちかけているなら、会計責任者だけでなく、小池さん自身も罪に問われる可能性が高くなります」

   小池都知事は例によって「適正に処理している」と答えている、だが、リオ五輪に着ていった和服は、この男の長年の愛人のもので、彼女もリオに行っていて、小池は着付けをしてもらっていたというのだ。

   そうだとすると小池都知事に説明責任がある。都議会のドン・内田茂の笑い声が聞こえてくるようだ。

週刊ポストが暴いたフジテレビ記者の暴力団癒着

   フジテレビは末期症状である。今度は報道局で警視庁や司法、横浜支局長などを務めたA記者(31)が、反社会的勢力の人間から供応を受け、車を入手する際に名義を貸していたことが明らかになったのだ。

   フジグループの産経新聞も12月19日付でこう報じている。

   「男性記者は同局(フジテレビ=筆者注)の調査に『高額な接待を受けたため依頼を断り切れなかった』と説明。警視庁組織犯罪対策3課はこうした事実関係を把握しており、慎重に調べている。

   捜査関係者によると、警視庁が今年、指定暴力団の関係先を家宅捜索した際、出入りしていた乗用車を確認。車が男性記者名義で登録されていたことが判明した。男性記者が乗っていた形跡はなく、暴力団関係者が使用していた疑いがある。現在、車の所在は分からなくなっている。

   週刊ポストがこの情報を掴み、フジ宛てにこの件で質問状を送ったのが16日。事実関係を確認中とフジから回答があったのが19日だった。週刊ポストの取材がなければフジ側は発表しなかったのではないかと、週刊ポストは疑問視している。

   私の高校の先輩だが、日枝久フジテレビジョン会長は責任をとって、退くという決断をすべき重大な事案だと思うが。

【絶対外れる馬券術】有馬記念、本命はサトノダイヤモンド

   先週の朝日FSは忘れて下さい。さあ、今週は今年のオーラス「有馬記念」。つくづくキタサンブラックという馬は運も味方につけていると思う。今回も絶交の1番枠。

   だが今回はジャパンカップのような楽な競馬はできない。ハナが速いマルターズアポジーが逃げ宣言しているから、キタサンは2番手か。

   去年の有馬記念の再現になる気がする。マルターズにキタサンが並びかけようとすると、そこを目がけて有力馬が早めに仕掛けるはずだ。

   ゴールドアクター、サトノダイヤモンドが先に行き、サウンズオブアース、マリアライトも手綱をしごいて襲いかかる。

   良馬場なら先週のように末脚切れるディープインパクト産駒が勝つと見る。本命は二冠馬になっていたはずのルメール騎乗・サトノダイヤモンド。対抗はデムーロ騎乗のサウンズオブアース。単穴にキタサンブラック。△はゴールドアクター、ミッキークイーン、サトノノブレス、シュヴァルグラン、末脚一番切れるデニムアンドルビーとする。

   GOOD LUCK!

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか