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過去最多!「技能実習生」失踪・・・ルビー・モレノ「気持ちわかる」実態にそぐわない制度

   外国人労働者の失踪は昨年(2016年)は5800人と過去最多となった。この5年余りで2万1492人だ。とくに目立つのは技能実習生で、3年の滞在期限が切れる直前に行方をくらまし、不法に就労しているとみられている。

   年間2000人の技能実習生の受け入れ窓口になっている団体は、失踪を防ぐための研修を強化し、失踪者の行方を捜す特別チームを編成した。元入国管理局幹部だったこのチームのリーダー、板垣憲千代部長は元実習生が不法滞在するアパートを突き止めた。建設会社から失踪したインドネシア人で、板垣部長がアパート前に張り込んで発見し、入国管理局が不法滞在の疑いで摘発して強制送還した。元実習生は「友だちに誘われて失踪したが、賃金が減ってしまい、今は後悔している」と話したという。

滞在期間短く仕送りできず、日本の育成側もメリット少ない

   実習生の失踪増加の背景には何があるのか。松村正代キャスターは「技能実習制度は滞在期間が最長3年で、1度限りです。育成した企業は実習生を人材として残せないという条件が、逆に失踪を助長してしまうのではないでしょうか」と指摘する。

   外国人労働者の問題に詳しい井口泰・関西学院大教授はこう答えている。「この制度は、日本の技能を習得してもらうことによる国際貢献を目指しており、より多くの人に習得してもらうためにローテーション方式をとっています。この方式の宿命で失踪者の増える背景になっています」

   ゲスト出演したフィリピン人女優、ルビー・モレノさんも来日当初、家族への仕送りにためにクラブでホステスをした経験から、「短期間で働く制度だと家族への仕送りができないんです。(失踪実習生の)気持ちはよくわかります」と話す。

偽造在留カード8万円!中国闇ルートが請け負い

   失踪者増加の背景にはもう一つ、闇の不法滞在ネットワークの存在があった。偽造在留カードを使っていたとして有罪判決を受けたインドネシア人元実習生は、実習期間切れ直前に静岡の工場から失踪し、アパートにインドネシア人の仲間6人と住んでいるところを摘発された。アパートの管理会社は偽造在留カードが偽物と見破れなかったという。偽造在留カードを入国管理局の在留カード等番号失効情報照会で調べたところ、期間は「有効」と表示され、カード番号も実在する番号が使われていたことが分かった。

   偽造在留カードはどう作られ流通しているのか。元実習生は「実習生の先輩から『偽造在留カードを用意しないと日本では仕事ができない。8万円出せば作ってやる』といわれ手配を依頼した」という。偽造在留カードの仲介者とのやり取りを追跡すると、たどり着いたのは中国人だった。中国人は中国のグループに取り次ぎ、でき上がった偽造在留カードは国際郵便で届けられ、金銭と引き換えに依頼元に届く仕組みになっていた。

   偽造在留カードがあれば、アパートを借りられ、スマホを購入して仕事にもつける。ルビーさんは「在留カードはすごく大事。私は肌身離さず、ずっと持っています。不法滞在でも、8万円は安いものですよ。どうしても買ってしまう」と話している。

   日本で働き続けたい実習生、労働力がほしい日本企業や事業主のミスマッチがある限り不法就労はなくならない。

NHKクローズアップ現代+(2017年1月18日放送<潜入ルポ『不法滞在ネットワーク』~次々に消える外国人~>)