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「文科省天下り」あの大学にも!?早稲田以外に4年間で38件

   文部科学省の天下り問題で内部資料をNHK社会部か入手した。そこには文科省と受け入れ先の早稲田大学の間でウソの筋書きが作られ、想定問答までがまとめられていた。文科省には4年間に少なくとも38件の組織ぐるみの天下り疑惑がある。

   民間では中高年の再就職がむずかしい状況の中で、役所や公務員の特権に利用した天下りは「これまでも大きな問題で、きびしく規制されてきました」とキャスターの伊東敏恵アナが伝える。省庁から再就職先を直接あっせんする行為や、本人が在職中に再就職運動をすることは禁じられている。今回はその両方をやっていたという悪質な違法行為だ。

監視委調査逃れるためウソのすり合わせ

   文科省の吉田大輔・元高等教育局長はおととし(2015年)8月に退職し、2か月もたたないうちに早稲田大学教授になった。これを再就職等監視委員会が摘発して報告書にまとめた。

   文科省は調査を逃れるため口裏合わせまでやっていた。実際は文科省が吉田局長の再就職を早大に依頼していたが、「想定問答」を作って、早大が高等教育に詳しい人材を求め、早大に在職した文科省OBに依頼した形をとったことにしていた。このウソがばれないように、文科省は早大や吉田元局長、さらにOBにもウソの証言を頼んでいた。

   NHKの大河内直人記者は「想定問答は文科省と早大とがやりとりを重ねて、手の込んだものになっていきました。ここまでやるのかと驚きました」という。監視委員会が去年8月に吉田元局長を調査した当日にも、文科省は人事課職員が早大や吉田元局長のところに出向いて、調査の状況を聞き取り、答えが食い違わないようにつじつま合わせをしようとしていた。

   文科省の言いなりになった早稲田大学も、建学の精神「学の独立」に反する行為を恥ずかしげもなくやっていたことになる。

役所の本音「優秀でなく行き場がない人が困る。どこかで面倒見ないと」

   天下り教授は吉田元局長一人だけではなく、違法行為は他の大学にも広がっている疑いが強まった。伊東キャスターは「文科省には4年間で10件の明らかな違法行為があり、違法の可能性があるケースがさらに28件出てきました。監視委員会は実質的に違反としました」と伝える。

   実態はどうなのか。かかわった文科省OBは人事課に10年以上勤め、今は自ら設立した団体の理事長をしている。「国の関与が不可となった中で、人材について相談を受けて人助けの気持ちで紹介することがあった」「退職予定者の情報を提供するのはあくまでボランティアで、違法性はない」と主張する。しかし、文科省の内部にも「得体の知れない組織が表に出たらヤバイと思ったことがある」という幹部もいる。

   神戸学院大の中野雅至教授は「天下り批判の雰囲気が最近は変わり、景気がよくなって世間の監視も緩んだ」と指摘する。中央省庁では事務次官になれない人は定年前に退職する慣行があり、一方で関連団体は行政改革で減っている。NHKが省庁に聞き取り調査すると、「問題は優秀でなく行き場がない人。どこかで面倒を見ないといけない」(環境省)という声も返ってきた。

   これについて、ある私大の関係者は「大学は文科省との関係を深めたい。いろいろな資金を流してもらうためにはいかなる手段もとる。その一つが天下りだ」ともらす。同志社大の太田肇教授は「増収賄なら指名停止の制裁がある。天下りには何もない。厳しい規制が防止につながる」と話す。

   伊東キャスター「他の省庁はどうなのですか」

   大河内記者「政府はすべての省庁に調査を指示しました」

   中野教授は「調査でどういう項目で調べるのかが問題です」と注文をつける。特定官庁と特定企業の関係まで突っ込んでチェックしないと形だけになりかねない。さらに、国だけでなく、地方自治体でも役人・公務員がさまざまなレベルで天下っている。受け入れ側の企業や大学総長以下の責任もあいまいにせずに追及しなければ、ウソで固めた行為はなくならない。監視委員会の機能強化も「この組織がキモ」(中野教授)というぐらい求められている。

あっちゃん

NHKクローズアップ現代+(「いまなぜ?官僚『天下り』問題ふたたび」)