日本学術会議が昨日(2017年3月7日)、「軍事的安全保障研究に関する声明案」を発表した。軍事に関わる国の研究のあり方に懸念を示し、50年前に同会議が出した「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を改めて確認したものだ。防衛省が公募する研究の急激な増加が背景にある。
学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」が出した声明案の骨子は、次の通り。
■50年と67年の二つの声明を継承
■防衛省の研究公募制度は、政府による研究への介入が著しく、学術の健全な発展という見地から問題が多い。民生分野の研究資金の一層の充実が必要
■大学などの研究機関は「軍事的安全保障研究」の適切性を技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきだ
■学会がガイドラインなどを設定することも求められる
同会議は1950年に「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、67年に前記の声明を出しているが、50年ぶりにこれを再確認する内容だ。防衛省に言及するなど具体的で、「学問の自由」が妨げられることがないよう、大学に研究の適切さを審査する制度の設置を促している。
同会議は4月の総会で決議する。声明に拘束力はないが、大学などの対応の指針になる。
同会議が動いたのは、前回声明から50年が経ち、研究者の中にも考えの違いが出てきたこと。さらに、防衛省が公募して、防衛装備品に応用できる先端研究を大学などに委託する制度が始まったことで、議論を続けていた。
司会の夏目三久「50年ぶりの声明案とは、どういう意味を持っているんですか?」
竹内薫(サイエンス作家)「防衛省が大学などに委託する研究の予算が、この3年間で急増したんです。3億円、6億円、そして110億円になった。110億円というと、数百人の研究者が関わる可能性がある」
夏目「そもそもどうして110億円に跳ね上がったんですか?」
竹内「軍民両用の研究が増えた。具体的には人工知能(AI)とロボット。民生用の研究でも、軍事に転用できてしまう。そのテクノロジーを軍事に使おうと、防衛省の予算が増えた。そこで学術会議が懸念を表明したということ」
やはり、庁から省への昇格や、文官優位から文官・武官対等、という変化が背景にあるのだろう。政治家が「国民の安全に責任がある」と言い出した時は要注意と、歴史は教えているのだが......。