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那須の雪崩事故で、引率責任者「絶対安全だと判断した」 警察は業務上過失致死傷の容疑で捜査

   栃木・那須のスキー場で起こった雪崩で、高校山岳部員ら8人が死亡した事故で、引率責任者の教諭が昨日(2017年3月29日)会見して、事故当時の状況を説明した。「絶対に安全だと判断していた」「しかしこうなってしまった」。基本的には、間違っていなかったと言っているような感が拭えない。

   犠牲者を出した栃木県立大田原高校が昨日、事故後初めての会見をした。植木洋一校長は、「あってはならない、痛ましい事故になってしまい、心からお詫び申し上げます」。講習会の統率者で、同校の山岳部顧問の猪瀬修一教諭は、「こういう事態に陥ってしまったことを、反省しなければいけない」と話した。

   猪瀬教諭は、現場の責任者として、当日の行動計画を立てていた。「前日に、テレビなどで雪崩が発生するかもしれない状況にあると認知はしていた」。

雪崩の危険ない場所選んだが

   当日朝、雪が降っていたため、登山経験の長い他の教諭2人と相談し、茶臼岳登山は取りやめ、「スキー場でラッセル歩行訓練はできるだろう」と変更を決めた。「その時には絶対安全であると判断した」。第2スキー場の奥、雪崩の危険がしばしばある地域には近寄らず、手前の樹林の斜面を登ることにした。

   午前8時、1班の大田原高校グループが先頭を進み、2、3、4班が続いた。女子だけの5班は下で出発を待っていた。1班の先頭には、真岡高校教諭、最後尾に大田原高校の毛塚優甫教諭(死亡)がいて、間に大田原高校の山岳部員12人が一列に並んでいた。

   そして1班が樹林を抜けて開けた尾根へ出た午前8時30分ごろ、茶臼岳のテングの鼻と呼ばれるあたりから発生した雪崩が襲った。助け出された生徒は、「目の前が真っ白になって、何度も体が回転した。雪に埋まって意識を失った。助け出されて意識が戻った」という。2班も雪崩の一部を受けたが、被害はなかった。

   雪崩が止まった時、体の一部でも雪の上に出ていれば助けだされるチャンスがあるが、たとえ10センチでも完全に埋もれてしまえば、わからない。運命の分かれ目だ。他の班が救出のために動いたが、結局8人が埋もれてしまった。

事故発生から50分後に通報

   事故の通報は午前9時を過ぎてから。麓にいた5班の教諭が、スキー場から離れた本部にいた猪瀬教諭のもとに歩いて知らせたのが最初だった。110番したのは、午前9時20分頃、事故発生から50分が経っていた。

   猪瀬教諭は、この間に現地から無線による連絡はなかったという。ただ、連絡用の無線機を車の中に置いたまま、10分ほど撤収の片付けをしていたという。「不用意だった。あまり意識していなかった」。ただ、この間に連絡があった可能性は少ない。

「ビーコン」のレンタル料1日1000円

   雪崩には必携の「ビーコン」を持っていなかったことについては、「それが必要な登山は行わない」と答えた。全く想定外だったということだが、むろん「持つべきだった」という意見はある。

   司会の夏目三久「茶臼岳登山を中止してラッセル訓練に変えた。では、茶臼岳にビーコンは必要なかった?」

   竹内薫(サイエンス作家)「ビーコンはレンタルで、1日1000円くらい。僕は必要だったと思いますね」

   夏目「高校登山でも安全の概念が変わるかもしれませんね」

   警察は業務上過失致死傷の容疑で、関係者から聞き取りを進めている。