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南スーダン派遣自衛隊「日報隠し」指示した背広組は誰だ?公表すると政府説明の矛盾バレる・・・

   南スーダン派遣の自衛隊PKO部隊の「現地で戦闘行為があった」という日報が隠ぺい問題の背景には、背広組と制服組の関係、さらには派遣そのものが持つ矛盾も潜む。

   防衛省が「陸上自衛隊がすでに破棄した」とした日報のデータを実際は陸自が保管していたが、背広組の幹部は「今さらあるとは言えない」と公表を見送り、大臣にも報告しなかった。国会で「(経緯がおかしい)第三者が調査すべきだ」と追及されると、陸自の複数のコンピュータの日報データが消去され、追及をかわすための対応マニュアルまで作られた。

現場の自衛官「いかに大変な任務か国民に知ってほしい」

   陸自幹部は「内部では早くからトップの対応に疑問の声が出ていた」という。「日報がないはずがない」「理解できない」「データの消去は完全な隠蔽だ」という声が上がり、陸自はデータを確認した段階で公表の準備を進めていた。説明を訂正し、「管理が不十分だった」と謝罪するつもりだったが、「『(背広組に)今さら』といわれたらどうしようもない。予算配分で絶大な力を持っているのだから」(陸自幹部)ということになった。

   しかし、日報には「30発以上の発砲音を確認」「戦闘が生起した模様」「約150名の死傷者が発生」とあった。派遣隊員は「現場で何をしているか知ってほしい。日報を出すのが国民の理解には一番。なぜ出さなかったのか疑問だ。国民あってのぼくたち。信頼を得られる組織でいたい」と悔しがる。

   かつて海上自衛隊の不祥事の分析にあたった前防衛大校長の五百旗頭真氏は、「間違いを認めるのがあるべき姿だが、その教訓が失われた」という。「事実に基づいて合理的、大局的に判断ができないといけない。思い込み、勘違いが是正されない組織であってはならないんです」

「戦闘地域には派遣しない」という虚構

   稲田朋美防衛相は防衛監察の実施を指示し、キャスターの武田慎一は「(公表しないというのが)誰の意志決定なのかが調査の焦点となります」と指摘する。元防衛相の森本敏氏は「責任を問われかねない事態を避けたいという気持ちが働いたのだと思います」といい、元防衛官僚の柳澤協二氏は「国会への悪影響を避けたい空気があるんですね。日報を出すなという指示はないのに、そうしなければと思っちゃった。この方が大きな問題です」と話す。官僚の忖度というやつだ。

   日本のPKOは憲法の読み替えという危うさの上に乗っている。「戦闘地域」へは派遣しないという建前だ。だから、派遣地域で日報のような戦闘があっては困るのである。おまけに「駆けつけ警護」である。施設隊は今月(2017年4月)から撤収が始まるが、「危険だから」とは言わない。言えないのである。政府の防衛政策には大きな「ウソ」がある。

   ※クローズアップ現代+(2017年4月6日放送「新証言 自衛隊"日報問題"」)