J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

加計学園理事の内閣官房参与「文科省は従えばいい」 週刊文春スクープも朝日と同着に

   久しぶりに読売新聞、産経新聞、朝日新聞を買って読み比べてみた。6月1日(2017年)の読売の一面トップは「五輪費1.4兆円 分担大枠合意」、産経は「米、パリ協定離脱へ」、朝日は「加計学園理事の内閣官房参与 新学部、前次官と話題に 面会認める 圧力は否定」

   朝日にはパリ協定離脱もアフガンでテロが起きたことも載ってはいるが、加計学園問題がトップというのは、意気込みは買うがいささか違和感がある。重要性からいえば米、パリ協定離脱であろう。

   では加計問題を読売と産経はどう扱っているのだろう。読売は4ページ目の政治の下に小さく「萩生田官房副長官文書記載日に面会 加計学園問題」とあるだけ。産経は5ページ目の総合で、安倍ベッタリ記者の筆頭格である阿比留瑠比記者が「民進よ、政治主導をお忘れか」と大きな見出があるその下に、「『加計国会』追及も証拠なく」として、前川喜平前文科事務次官の爆弾発言もあるが、「首相の関与を示すような決定的な証拠は得られず、手詰まり感が広がる」と、安倍政権に一点の曇りもないという見方。

   今日の各紙の紙面には週刊文春、週刊新潮の広告があるからまだいいが、読売と産経の読者には、加計問題が安倍政権を揺るがす問題になっているということはわからない。新聞という公器が、これほど情報に差をつけること自体、安倍政権にとって何か不都合なことがあるのだろうと思わざるを得ない。

   朝日が報道した内容は、週刊文春で前川前次官が証言している「当時、加計学園の理事で内閣参与だった木曽功氏が、私に会いに来て、『国家戦略特区制度で、今治に獣医学部を新設する話、早く進めてほしい。文科省は諮問会議が決定したことに従えばいい』と言われた」とほぼ同じだから、時系列的にいえば週刊文春がスクープし、朝日が後追いして発売日と同時に出したということになる。さすが週刊文春である。

「前川さんのおかげで今がある」

   週刊文春はさらに、前川が頻繁に通っていた「出会い系バー」を取材し、バーで出会い3年間で30回以上も前川と食事し、時にはタクシー代として5000円もらったという26歳の女性を見つけ出し、話を聞いている。

   新聞広告で見ると、前川前次官はやっぱり買春していたのか、週刊文春よ、そこまでやるかと思ったが、読んでみるとそうではない。

   要点だけを紹介しよう。件のA子は、その店へ無料で借りられるヘアアイロンや携帯の充電器目当てで来ていた。女の子はフリードリンクでフードが一品タダになる時間もあるので、そうやって時間つぶしをする子も結構いるらしい。

   11年の冬に友人2人で来たところを前川に指名された。その日は3人でパフェを食べて別れたという。その後、彼女から連絡して歌舞伎町のダーツバーなどで友だち何人かと遊んだが、12時ぐらいになると前川はそそくさと帰っていった。

   その頃は文科省の偉いさんとは知らなかった。彼女は知り合いが死んで勉強に身が入らず、大学を辞めてキャバクラ嬢の体験入店などを繰り返している時期で、前川から「早く就職したほうがいい」といわれたそうだ。

   百貨店の婦人服売り場で働くようになったときは、売り場にも足を運んでくれたという。その後高級ブランド店に就職が決まった時は、友達と一緒に食事をおごってくれ、「何でも買っていい」と歌舞伎町のドン・キホーテへ連れて行ってくれたという。ドン・キホーテっていうのがいいね!

   A子の両親も前川の存在は知っていた。当然ながら週刊文春も、2人の間には本当に肉体関係はなかったのか聞いているが、彼女は「ありえないですよ。私、おじさんに興味ないし」と否定している。

   就職してから会う回数が減ったが、今年の1月、天下り問題でテレビに出ている前川を見て、官僚だったことを知ったそうだ。

   A子は、取材に応じた理由をこう話している。

   「記者会見のあった二十五日に、お母さんからLINEが来て『まえだっち(前川のあだ名=筆者注)が安倍首相の不正を正している』。それで、お父さんとテレビ見て『これは前川さん、かわいそうすぎるな』と思ってお話しすることにしました。(中略)私は前川さんのおかげで今があると思っていますから」

   できすぎた話のようにも思えるが、週刊文春によれば、前川は退職後、夜間中学の先生をボランティアでやっているそうだ。

   売り上げ812億円、営業利益92億円を叩きだしている「優良企業の御曹司」(週刊新潮)で、祖父は、私がいた講談社の近くにある男子大学生向けの寮「和敬塾」を設立した人物。村上春樹も大学時代はここに入寮していたという。

   東大法学部を卒業したが、どうしても役人になりたくて家業を継がず、しかも、優秀な成績にもかかわらず文部省を選んだ「反骨の人」なら、こうした女性との付き合い方もあるのかもしれない。

官房長官の前川氏攻撃のすさまじさ

   一方、前川の爆弾証言で安倍や菅は大慌てのようだが、中でも菅の前川攻撃はすさまじいと週刊新潮が報じている。

   「彼は異常だよ。とんでもない輩だ。だって、そういうこと(性交渉)を目的に店は客を集めてるんでしょ。そこで小遣いをあげている......。文科事務次官の立場にある人が最もやってはならない行為でしょ」

   焦っている証拠だろう。官邸は、スノーデンが暴露したアメリカ国家安全保障局(NSA)のような役割をしている内閣情報調査室と公安警察に前川の活動監視を命じ、親しいマスメディアに書かせるという禁じ手を使ったのである。

   週刊現代で公安の内情に詳しい青木理がこう語っている。

   「警視庁公安部は、テロ組織や過激派以外にも、日常的に中央省幹部、次官・局長クラス、さらには問題を起こしそうな官僚や重要案件の担当者などの身辺情報を集めています。また、内調は事実上、公安の『官邸出先機関』のようなものです」

   週刊新潮は「安倍官邸一強で日本が失ったもの」という巻頭特集の中で、加計学園問題では農林省も内閣府に辟易しているとスクープしている。

   なぜなら学部の開設は文科省だが、獣医は農林省が所管している。3月末に内閣府は国会審議のために加計学園問題の経緯をまとめた文書を作成したが、そこに、まだ正式に加計が選定される前の昨年12月8日の時点で、加計だけに獣医学部新設を認めると「文科相・農水相とも調整していた」と記されていたという。

   内閣府は、自分たちだけの独断ではなく、農水省もこの問題に「加担」していたと「事実を捻じ曲げようとしたわけである」(週刊新潮)。当然、農水省は内閣府に文書の訂正を要請したが、応じなかった。

   次々に出る安倍官邸関与の重要証言だが、自民党内から「おかしい」という声が上がらないのはどうしたことか。その中で唯一、石破茂前地方創成相がこう語る。

   「前川さんは記者会見という場で、あれだけ多くのメディアの前で、『行政が歪められた』と発言したわけですから、政府としては『いいえ、歪められておりません。なぜならば、かくかくしかじかで......』と説明すればいいだけの話。きちんとした説明をするのが政府の責任でしょう」

   石破は、文書があるだとかないだとか、出会い系バーに行っただとかは、行政が歪められたのかどうかを判断するには何の関係もない。政府は公平公正に行政をやっていると説明することに専念すべきだという。この程度の発言が真っ当に思えてしまうぐらい、安倍政権は腐っているということだ。

安倍政権の終わりの始まり

   「安倍内閣の支持率は41%となり、4月の前回調査から12ポイント減と大幅下落した」(北海道新聞6月1日付)「安倍内閣の支持率は26.7%で、前回調査の52.1%から25.4ポイントも激減しました。12年12月の第2次安倍政権の発足以降、最低の水準に落ち込みました」(日経新聞・同)

   いよいよ世論を無視した安倍政権の終わりの始まりが見えてきたようだ。

   山口敬之という男を覚えているだろうか。元TBSワシントン支局長だったが、この男が、知り合いの女性ジャーナリストを誘い出し、酒(彼女は薬を盛られたといっている)を飲んだ。だが、彼女は急に意識を失って、気がついたときはホテルのベッドで全裸にされ、レイプされたと告訴した。「準強姦容疑」で山口に逮捕状が出て、逮捕寸前までいった。

   だが、官邸に近い警視庁刑事部長がそれを握りつぶしたと週刊新潮が3週間前に報じた。

   この山口も安倍ベッタリ記者の典型で、テレビに出て安倍擁護発言を繰り返していた。

   この不起訴処分を諒とせず、5月29日、彼女は名前と顔を出して、検察審査会に審査を申し立てたことを公表する会見を開いたのである。

   詩織、28歳。週刊新潮のグラビアに「決意の告発」と題して彼女の写真が載っている。ハーフっぽい美人である。こんな美人が、顔をさらしてレイプされたと訴えるのだから、よほどの覚悟だろうと思わせる。

   検察審査会は選挙権のある市民11人が選ばれ、捜査記録を調べたり検察官から意見を聴き取ったり、証人の尋問をする。

   8人以上が「起訴相当」と賛成すれば起訴される。そうなれば検察官は再調査し、判断が覆らなければ審査会で再検討し、再び8人が「起訴すべし」となれば、容疑者は強制起訴される。

   焦点は、菅官房長官と親しい中村格(いたる)警視庁刑事部長(当時)が、捜査の中止を命じたことが、「捜査の指揮として当然」(中村)だったのかどうかにある。

判例写すコピペ裁判官とは?

   週刊現代の連載「裁判官よ、あなたに人が裁けるか」で、岩瀬達也がコピペ裁判官が急増していると書いている。

   岩瀬は、本来、判決は、裁判官が「記録をよく読み、よく考え、証拠に照らして的確な判断を下さなければ書けない」ものだが、それを普通の事務のように処理することを可能にする判例検索ソフトができているという。

   最高裁は「判例秘書」や「知財高裁用 判例秘書」など各種ソフトを、約7500万円かけて購入しているそうだ(2016年度予算額)。このうち「判例秘書」はほとんどの裁判官が活用していて、自分の抱えている訴訟と類似する過去の事件で、どのような判例があるかを検索しては、判例起案の参考にしているという。

   「参考にするだけならまだしも、なかには似た事案の判例を見つけると、やっとこれで判決が書けると顔をほころばせ、そのままコピペしている裁判官もいる」

   こう語るのは首都圏の大規模裁判所に勤務するベテランの裁判官。

   「そういう嘆かわしい実態を、最高裁も分かっているはずです。なのに、『判例秘書』の運営会社から、情報提供の要請があれば、便宜をはかり、かなり迅速に対応している。もはや『判例秘書』は、裁判官にとって無くてはならない『起案バイブル』なので、その手当ては怠れないということなのでしょう」(同)

   判決までコピペでは、心の通った判決が書けるわけはない。それに過去の判例と違うことなど間違っても判断できるわけはない。

   「『コピペ裁判官』の特徴は、訴訟で争われている事実認定はどうでもよく、執行猶予にするか実刑にするか、原告の請求を認めるか認めないかにしか関心がない。だから、論理の組み立ては、過去の判例をそのまま借用し、結論部分に有罪か、執行猶予かを書けばいいだけです」(元裁判官)

   近いうちに間違いなく裁判官はAIになるだろう。

早くも賞味期限が来た小池都知事

   週刊ポストが舛添要一前都知事の独占手記をやっている。いまさら聞くことなどないように思うのだが、覗いてみよう。

   まずは、自分の時に五輪予算が膨れ上がったが、それを削減したと自慢し、森喜朗が自分の政治の師だとして、五輪の組織委員会会長として大所高所から的確な判断をしたと讃えている。たしかに森は気配りの政治家ではあるが、サメの脳みそではな。

   また、小池にすっかり悪者にされたドン・内田茂も、世間のイメージと実像が異なり、都知事選に立候補したときには、猛反発した自民党都連を抑えてくれたと、感謝している。

   豊洲問題では、石原慎太郎や猪瀬直樹などの身勝手な人事で、職員は委縮し、イエスマンしかいなくなったところに問題があったとしている。

   そして小池のやり方をこう批判する。

   「豊洲を含めた小池劇場が長引くほど、財政を含めた様々な面で大きな負担を強いられるのは、都民だ。
 『サーカス』に騙された都民は、そのツケを自ら払わなければならないのである。
もちろん分かっている。私が辞任した結果、都政に混乱を招き、都民を失望させてしまったのだ。それに関しては、心から申し訳ないと思っている。
 さきほど職員と都知事の信頼関係構築を説いたが、私にそれができたという自信はない。そんな私が、最後に私心を捨てて言う。小池知事は都民を騙すのをやめたほうがいい。そして都民よ、いい加減目を覚ましてほしい」

   都民はあなたへの怒りを忘れてはいない。その怒りが小池支持へ向かい、小池も口先ばかりで何もやろうとしないで、国政への足掛かりとして都議選を私物化しようとしている。

   国と同じで、我々都民も、一度たりとも「都民のための都政」を真剣に考える都知事に出会ったことはない。あるとすれば美濃部都政の一期の時ぐらいか。

   小池は早くも賞味期限切れが来たようだ。だが、安倍政権と同じように、小池しかいないという「感情論」で、小池新党がある程度の勝利を収めるかもしれない。その結果、都民は、何も決められない都知事の下で、高い税金と不十分な福祉、明日起こるかもしれない大災害に怯えながら生きてゆかなくてはいけないのだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか