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米国内で強まる「パリ協定離脱するな!」カリフォルニアは再生エネ100%目標

   ドイツで国連のCOP23が開催されているが、トランプ大統領が「パリ協定脱退」を表明したアメリカでは、二酸化炭素(CO2)排出量が天然ガスの2倍もある石炭産業が復権している。パリ協定は「気温の上昇を産業革命前と比べてプラス2度未満に抑える」「そのための温室効果ガスの排出量を2050年以降は実質ゼロとする」を目標としていて、197か国が参加した。しかし、CO2排出量(2014年)が世界で2番目に多いアメリカが脱退すると目標は大幅な遅れをとる。

   田中泉キャスターがアメリカ東部のペンシルベニア州の石炭の町を訪れた。6月(2017年)に開発されたばかりの炭鉱の町は石炭景気に沸き、炭鉱では新たに70人を雇用する計画という。男性は「CO2は出したくありませんが、生計のためには炭鉱しかないのです」と話す。

9州、252都市、1500の企業・大学が反トランプ宣言

   石炭復権はアメリカだけにとどまらず、温暖化対策で世界をリードする欧州の足並みまで乱しつつある。EUはパリ協定の目標達成のため加盟国にCO2排出削減量を割り当てている。ポーランドはEUの中でも石炭消費量が多く、電力の8割以上を石炭による火力発電に頼っており、その割り当てが厳し過ぎると見直しを求めていた。ポーランドは今年に入って、アメリカからの石炭の輸入が昨年の6倍に達している。

   一方、アメリカ国内では離脱に反対する動きも広がっている。カリフォルニア、ニューヨーク、バージニアなど9つの州と252の都市で、「パリ協定遵守」が宣言され、1500の企業や大学が加わって「私たちはまだ脱退していない」を合言葉に連携を強めている。

   その先頭を切っているカリフォルニア州では電気自動車が急速に普及し、世界最大の太陽熱発電所が造られ、どんな気象条件でも発電できるAI搭載の風力発電を開発するなど、再生可能エネルギー100%を目標に掲げている。ブラウン州知事は「悪名高いトランプ大統領のおかげでわれわれの温暖化対策は一段と高まっているのです」と皮肉を交えながら自慢する。

「脱退の賛否」次の大統領選の最大争点

   では、こうしたせめぎあいの中で、パリ協定はどこへ向かうのか。COPの交渉を20年近く調査し続けてきた名古屋大大学院の高村ゆかり教授は次のように語った。「今回のCOP23の焦点は二つあります。一つは、来年のCOP24でパリ協定の詳細なルールを決めることが予定されており、このルール作りの合意をどう進めるか。

   二つ目は、今回のCOP23はアメリカが脱退を表明して初めての会合で、アメリカがどういう立ち位置でこの交渉に臨むかです。アメリカは今回もCOP23に代表団を送り込み交渉に参加していますが、オバマ政権時と違って、その規模が非常に小さくなっています」

   実はアメリカが正式にパリ協定を脱退できるのは2020年11月4日で、アメリカ大統領選の投票日翌日になる。当然、次の大統領選の結果が、脱退の行方を大きく左右することになる。慶応大学の中山俊宏教授は「反トランプ運動ともいえる今の動きは民主党中心に起きています。この環境を巡る問題が、次回大統領選の主要な争点になることは間違いないでしょう」と指摘した。

NHKクローズアップ現代+(2017年11月15日放送「アメリカ発"環境ウォーズ"~揺れるパリ協定~」)