J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

貴乃花インタビュー記事の空虚 どこまでぬかるみ続く

   どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ。日馬富士殴打"騒動"を見ていると、そう思わざるを得ない。

   今日発売(2017年12月27日)の週刊文春と週刊新潮の巻頭特集はどちらも「貴乃花激白」(文春)「貴乃花が本誌に激白」(新潮)と、貴乃花側の一方的ないい分を取り上げ、例のごとく、八角理事長批判、白鵬批判である。

   ともに貴乃花が初めてこの問題に対する真意を語ったとタイトルを打っているが、貴乃花の言葉は、そう多くない。

   大筋は「貴乃花に極めて近い関係者」(週刊文春)「貴乃花のタニマチ」(週刊新潮)の話である。週刊新潮の貴乃花の言葉は、「未来に夢や希望を乗せてこれから力士を志す者たちへ学べる角界であるべきと考えています。入門しての清純な真っ直ぐな一途を与えられるのも角界の大きな役割です」

   週刊文春はもう少し長い。「相撲協会は私の責任を問うかたちにもっていきたいのでしょうけども、それはかまいません。私は巡業部長ですが、その立場では対処できない出来事が起きたのです。本人(貴ノ岩)は当初、『階段から転んだ』と説明しましたが、とてもそんな怪我には思えませんでした。私はその場にいたわけではなく、真相は分かりません。一般人を巻き込んでいる可能性も否定できなかった。同時に『親である師匠にも言いにくいことが起きたのか』と、背景にある根の深さを感じ、警察に全容解明を委ねたのです」

   協会からもメディアからも追及されている、「なぜすぐに協会に報告しなかったのか」という件では、「警察に報告してくれるよう頼んでいる」と申し開きをしているが、協会幹部として、巡業部長としての立場として、自ら報告すべきであったと、私は思うのだが。

   週刊新潮では、貴乃花の支援者の一人が、貴ノ岩の診断書を作成した済生会福岡総合病院の医師が、騒動発覚後、相撲協会を通じて、「貴ノ岩は重傷ではなかった」というコメントを発表したことに対して、「患者の情報を、第三者である相撲協会に流すのは医師としての倫理に反する行為で、医師法違反に当たるのではないか、と貴乃花親方の報告書には書かれています」と話している。

貴ノ岩恩師の責任は

   週刊新潮ではタニマチが、問題の飲み会に白鵬から誘われた貴ノ岩は、断っているのに、白鵬たちは恩師の鳥取城北高校相撲部の石浦外喜義総監督&校長から誘わせたという。

   貴ノ岩は、なぜ石浦さんがそんな飲み会の場を作ったのか、信じられないと思っているようだ。

   その石浦は、日馬富士が殴打する席にもいて、その後、白鵬や日馬富士らとラーメンと餃子を食べに行っているという。

   週刊文春で貴乃花に近い関係者が「日馬富士の暴行をすぐに阻止できなかったとして白鵬や鶴竜は相応の責任を問われましたが、それは石浦校長も同じこと。教育者だけに、より責任は重いはずです」と指摘している。それはその通りであろう。

中身ないインタビュー

   週刊誌界で重きを成す2誌が、そろって渦中の大物を曲がりなりにもインタビューしたのだから、貴乃花が考えている「相撲界への危機感と改革」とは何なのか、聞いているはずだと思ったが、それが、

   「少子化が進む中、子どもたちが相撲にどんどんなじみがなくなっていることを危惧していました。これでは将来、力士を目指すわけがない。ですから、相撲学校の創設を提案したり、子どもたちが相撲に触れる機会を増やそうとしてきました」(貴乃花に近い関係者・週刊文春)

   失礼だが、彼の改革とはこの程度かと、思わざるを得ない。もっと根本的で深刻な問題が、相撲界にはあるはずだ。それを引き出してくるのがメディアの役目である。

   インタビューとは、読者に代わって「聞くべきこと、どうしても知りたいこと」を聞くことである。

   それが相手の土俵に乗って、相手のいい分を垂れ流すのでは、新聞の官邸クラブと五十歩百歩と批判されても致し方がないはずだ。

AI株価予測は当たるか?

   週刊現代にいこう。週刊現代は来年はカネ儲けの年になると考えているようだ。カネがらみの特集が多い。

   新年合併号の売り物企画は「AIで株価を予測する」、しかも前編・後編「袋とじ」である。

   私が学生時代、競馬の予測でコンピュータが使われ、その予想が当たると現代で特集したことがあった。

   それが大きな話題になり、確か高田馬場だったと記憶しているが、駅構内の売店に競馬ファンが押し寄せ、売店が押し潰されてニュースになったことがあった。

   だが、それも一時的なもので、競馬はコンピュータでは予想できないとわかり、ファンも離れていった。

   AIで株価予測というのは、その時のことを思い出させた。

   週刊現代に協力したのは「財産ネット」の荻野調代表。彼がこう話している。

   「今回予測に用いたのは、弊社の『Phantom-ALCOM株価予報』。独自開発したAIが過去の株価チャートのビックデータを機械学習して、将来の株価レンジを予測するものです。戦争などの特殊事情は考慮していませんが、過去1年間に日経225銘柄でテストした結果、80%以上の確率で株価レンジを予測できた」

   232銘柄が「現在の株価」「最低値」「最高値」に別れている。この表の使用法はいたってシンプルだという。

   「18年初めまで、最高値と最低値の中央を目指しながら株価は推移すると予測されます。つまり、実際の株価が最高値に近づいてくれば『売り』、最低値に迫ってきたら『買い』。売買するタイミングの判断材料になるわけです」(荻野代表)

   なるほど。そうして見てくると日本ハムが現在の株価が2743円で最低値が2712円。最高値は3712円だから、これは買いになるのだろう。

   小野薬品工業の現在の株価は2534円。最低値が2335円。これは上昇して最高値の3392円になる。だとすれば買いになるのか。

   SUBARUは現在の株価が3701円で最低値が3691円だから、これも非常に近い。よって最高値の4534円に向かって上昇すると見られるから、買いか。

   リコーの現在の株価が1037円。最低値が956円だから、最高値1293円に向かって上昇する。

   スカパーJSATHDも現在の株価が502円で最低値が461円。よって最高値の611円に向かって上昇すると見るのだろう。

   これでいいのかな週刊現代さん? 将棋や囲碁でわかるように、AIが正確に予測するためにはビックデータがどれほど入力できるのかによるといわれる。

   この株値予測に、どれだけのビックデータが入っているのか、私にはよくわからないが、ものは試し、安いスカパーでも100株買ってみますか? 私は買わないが。

お金使わないIT長者

   週刊現代の巻頭大特集は「新しい日本の大金持ち100人」である、1位のコーエーテクモHD社長の襟川陽一社長(67歳)の資産が1400億円だそうだ。

   「家業だった染料の卸販売をゲーム開発に大転換。『信長の野望』など人気シリーズを次々と発表。99年に経営の一線を退くも、09年にテクモと経営統合し、再び社長に就任。恵子夫人と二人三脚で社業を拡大させた」(週刊現代)

   弁護士ドットコムを始めた元榮太一郎会長(42歳)は、弁護士という専門家をもっと身近なものにして、世の中をよくしたいという思いでビジネスを始めたという。

   この法律相談サイトで資産222億円をつくり、16年の参院選で自民党から出馬し、当選している。現在、弁護士、経営者、政治家の顔を持っているという。

   私はよくわからないが、ここに出ている新しい金持ちたちの多くはIT長者のようだ。

   だが、資産何百億といっても、個人でそのカネを自由に使えるわけでもないだろう。飲み食いやクルマなどは経費で落とせるとしても。

   またITは浮き沈みが激しい。ジェットコースターに乗っているようなものではないのか。

   ビックデータ解析やAIによる業務支援サービスを提供するユーザローカルの伊藤将雄社長(資産146億円・44歳)はおカネを使わない、いや使えないという。

   「日本社会に閉塞感があるのは確かですよね。日本人の寿命は長くなったために、将来が不安になっている人が多い。景気がいいと言われながら、個人消費が振るわないのもそのためでしょう。

   私自身も同じことを考えています。すぐ死ぬとわかれば、ぱっとおカネを使うかもしれませんが、あと50年近く生きるかもしれないと思うと、無駄なことに使えない。

   一度でも贅沢の味を覚えてしまうと、後で大変だと思うので贅沢をしません。飛行機もファーストクラスはおろか、ビジネスクラスにも一度も乗ったことはないし、乗りたいとも思わない。

   自分のライフスタイルが変わることが怖いんです。ビジネスクラスに乗り続けるために事業を頑張り続けるというのも一つの考えだし、それは否定しませんが、自分には合わないと思います」

   週刊現代は、そうはいっても、時価総額で150億円近くの資産を持っている身だから、多少株を処分して、ビジネスクラスに乗ってもバチは当たらないだろう。だが、このストイックさが新しい経営者の特徴なのかもしれないといっているが、私はそうは思わない。

   IT企業は、少しでも時代に遅れると、あっという間に崩壊していく。その怖さをわかっているから、使わない、使えないのだ。

   クックパッドの創業者・佐野陽光のように、株を売って創業者利益を持ってカリフォルニアに移住するようなのが、一番いいのかもしれない。

   でも、資産が何百億という金持ちがこれだけいるのに、俺のところには、わずかなおこぼれも回ってこないというのはどうしたことか。 

   金持ちはさらにカネを儲け、貧乏人はさらに貧乏になる。嗚呼!

"無料で遊べる愛人" から恨まれた桂文枝

   さて、昔『塀の中の懲りない面々』という本がバカ売れしたことがあったが、娑婆にいても懲りない人は多くいる。

   ましてや「浮気」というのは、バレて女房からも世間様からも大バッシングを受けても、懲りないもののようだ。

   桂三枝から桂文枝と名人の名を引き継いだものの、16年には歌手との長年の不倫関係をフライデーに暴露されて、青菜に塩だった。

   その文枝にまたまた醜聞である。ここまでくると「女遊びは芸の肥やし」という言葉も色あせてくる。

   週刊新潮が報じた今度の女性は夏目恵美子(仮名)、56歳で、日舞の先生だそうだ。「若い頃の千草薫に似ていて、和服がぴったりくる女性だ」(週刊新潮)

   きっかけは08年の12月に、文枝が「関西にも定席寄席を」と奔走してできた演芸場「天満天神 繁昌亭」に、彼女が足を運んだこと。

   繁昌亭の横の喫茶店に彼女がいると、文枝が現れ、一緒に写真を撮ってくれて、メールで送ってもらってからだという。

   ほな、写真送るからメールアドレスを教えてというのは、女性を引っかけるときの常とう手段である。

   その後、文枝が「ゆっくり話がしたいから君の家に行きたい」といいだしたが、それは断った。

   それでは諦めないのがこの男のマメなところである。料理が好きな彼女は、料理の写真をメールで送ると、本当に弟子を連れて家に食べに来たのだ。

   2人が男女の仲になるのにそう時間はかからなかった。

   彼女はそれまで男性経験がなく、文枝が初めての男だったという。

   文枝は弟子を連れてきて、アレの間、階下で待たせていたそうだ。

   こんなメールを文枝は彼女に送っていたと、週刊新潮が全文を載せている。

   「温かいよ。○○のおっぱいを思い出していた。キスもうまくなったし。ちゃんと○○のあそこにもキスさせてくれたし よかったよ ○○がぬれぬれになって それを思い出しただけで体が熱くなって あそこが硬くなってきた」

   大人のオモチャを買って使おうとか、局部の写真を撮りたがったそうだ。高校の友人の前で、文枝は、「俺、50年後に彼女と結婚すんねん」ともいったそうである。

   まあ、50年後には生きていないから、なんとでもいえるだろうが。

   だが、文枝に弄ばれているだけだとわかった彼女は、一日に何度もメールをしたり、電話をするようになると、男のほうも怒ることが増えてきたという。

   その挙句、文枝に会いに繁昌亭へ行くと、弟子が出てきて彼女を止めようとして揉め、警察沙汰になったそうだ。

   結局、文枝からは「君の家には行かれへん」と通告される。前にバレた女性歌手には毎月20万円の愛人手当を払っていたと報じられたが、この彼女にはお手当てをくれたことはなかったそうだ。彼女はこうつぶやく。

   「お金が欲しくて付き合ったわけじゃないけど、よくよく考えれば、私は"無料で遊べる愛人"だったということです」

   付き合った女性たちに、これほど恨むつらみを買う文枝という噺家、よほど人間の出来がよくないのだろうか。

   こんな噺家の人情話など、これからはばかばかしくて聞いちゃいられないと思う。

   そういえば、はや、立川談志の「芝浜」を聞く年の暮れになったな。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか