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東京に250万人が避難できる場所があるのか!「スーパー台風」の暴風と高潮から身を守るには

   超強力台風21号が関西と四国を直撃した。「あ、やばい、やばい」「うわっ、わわわわわ」などといった叫び声つきの録画映像がNHKに800本以上寄せられた。実際、大阪市を中心に桁違いの強風で看板や屋根が飛び、車や自販機が宙を舞うありさまだった。一段とスケールアップして「スーパー台風」ともよばれる脅威に私たちはどう対処したらいいのか。

   駐車場の車が数十台吹き飛ばされた現場に立った防衛大学校の小林文明教授は、高層ビル横の駐車場が通路になって、風の強さが増した点を指摘する。「風が集まるので、軒並みやられた。車も決して安全ではない」という。

   最大瞬間風速は全国1000か所で記録更新された。大阪では50メートルを超し、700人がケガ、4800棟が被害を受けた。恐ろしいのは、身近な物が風で飛ばされると凶器になることだ。

マンションの中にいても飛んでくる破片で死亡

   大阪市西区ではクーラーボックスに直撃された40代男性が亡くなった。植木鉢、ガラスの破片......普段は飛ばない物が飛び、非常に危険な状態になる。傘や濡れたタオルでも飛べばガラスを割ることが実験で証明されている。

   家の中にいても安全とは限らない。

   4日(2018年9月)の台風で、マンション8階にいた70代女性が風で飛んできた建材の破片にあたり死亡した。強風が建物の一部を壊し、はがれた壁材や破れたガラスが他の建物にいる人を襲う「負の連鎖」だ。強風は強化ガラスの窓を打ち破ることがあり、カーテンを閉めたぐらいではガラスが飛び散るのは防げない。

   飛び込んできたガラスの破片で足に全治1か月のけがをした女性は「家にいれば大丈夫と思ったが、まさかやられるとは」と振り返る。

   専門家は「竜巻と同じレベルの対策が必要です」と危機感を強める。台風に襲われてきた沖縄県で流れるCMに「とめる、しばる、片づける」というフレーズがある。ベランダにある品々を固定するのは、お互いの安全のために欠かせないルールになっている。そのうえで「安全な場所を事前に選んでおき、避難すること」を勧める災害研究者もいる。

   もう一つ、問題になったのが高潮だ。

   今回の台風21号は、防潮堤をいとも簡単に超えて住宅街や空港に押し寄せた。高潮のイメージを大きく変えた。「風向きが東から南に変わり、大阪湾に吹きつけた。満潮時刻と重なり、潮位が上がった」と分析される。高潮の巨大なエネルギーが軽視できないことを示した。

   東京都は今年(2018年)3月、もし巨大な高潮が東京湾を襲ったらどうなるかというシミュレーションをまとめた。23区の3割が浸水し、8000人が死亡、250万人が区外に避難を余儀なくされることがわかった。

南に開いた湾を持つ東京・大阪・名古屋が危ない

   地下街に水が流れ込んだら......。2004年の台風で被害を受けた横浜地下街の飲食店主は「地下にいると状況がわからない。避難が遅れ、階段に水が流れ込んできて、なかなか上がれなかった。これまで生きた中で一番怖かった」と振り返る。

 

   東京、大阪、名古屋のどれもが南に開いた湾に面した都市だ。その地下街にいる人たちに危険をどうやって素早く知らせるか、一斉に避難ができるのか、深刻な課題が浮かび上がった。250万人規模の避難所などまだない

   NHKの松宮重人記者は「さらに強いスーパー台風の危険が指摘されています。社会活動を一時ストップすることを考えないといけないという専門家もいます」と、どこまでストップするのかを事前に決めておく必要を強調する。

   今回の体験で台風の危険度が格段に増したことは誰でもわかる。「今すぐに始めて」と武田真一キャスターは語ったが、策がまたまた後手に回ることがないようにしなければならない。「想定外だった」「あの時にやっておけば」はもうウンザリだ。

   ※NHKクローズアップ現代+(2018年9月10日放送「暴風高潮 恐怖の瞬間~台風から身を守るには~」

   文・あっちゃん