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「大坂なおみ」パワーも気持ちもセリーナに勝っていた!ピンチで冷静になれたテニス

   全米オープンで優勝した大坂なおみ選手は、トーナメントを勝ち進んでいく中でどんどん強くなった。元世界ランキング4位の伊達公子が「優勝へのターニングポイントだった」と注目したのは4回戦だった。我慢のテニスでピンチを乗り切った試合だ。

   パワーテニスが持ち味のベラルーシのアリーナ・サバリエンカ選手を相手に、大坂は第1セットを取った後、第2セットは攻めに出たサバリエンカにブレイクされ、ミスの連続もあって落としてしまう。しかし、大坂は落ち込まず、最終セットはていねいなプレーを続け、第4ゲームになって一気に攻勢に転じて相手のミスを誘い、強烈なサーブで勝利した。

   大坂はその時のことを「もし負けたらどんな気分になるかと、少しネガティブに考えてしまった。悪夢がよみがえった」と振り返る。大坂とは食事をともにするなど、付き合いの多いプロテニスプレーヤーの尾崎里紗は「昔のなおみならメンタルを回復できず、負けていたかもしれない。今回はメンタルの部分でしっかり切り替えをし、自分を信じたので崩れかけても立ち直り、ファイナルセットを戦えたのだと思います」と語った。

   3年前に大坂と対戦して勝ったこともある伊達は、「大きく変わっていますね。比べるのもおかしいぐらい。なによりもパワーだけに頼らなくなったのが一番大きい」と分析する。

コーチのサーシャ・バジンが教えた「パワーに頼りすぎるな」

   ピンチでも耐えられるテニスへの成長。支えたのは信頼できるコーチとの出会いだった。今シーズンから大坂のチームに加わったサーシャ・バジンだ。パワーに頼りがちで自滅することがある大坂に、コントロールを重視したストロークを強化し、精神面での脆さを克服できるよう指導した。フィジカル面でも、筋肉量を落とさずに7キロ減量するなど強化した。

   そして迎えた憧れのセリーナ・ウイリアムスとの決勝戦。第1セットは大坂が圧倒するが、第2セットはセリーナにパワーとテクニックで1-3とリードされる。伊達が注目したのは次の第5ゲームだった。

   セリーナのサーブを打ち返した大坂のボールは、セリーナが触れることすらできない見事なリターンエースとなり、流れを引き寄せた。伊達は「勢いがセリーナにつき始めたところでブレイクし、相手のサービスゲームとなった。そのあとのファーストポイントはすごく大事なのですが、大坂選手はその時にしっかり気持ちを切り替え、ファーストポイントをとりました。その心の準備が彼女にとって大きかったですね」という。

   苛立ちを募らせるセリーナが爆発し、ラケットを地面に叩きつける。審判に向かって「嘘つきはあなただ。泥棒だ」と罵声を浴びせ、会場は異様な雰囲気に包まれる。大坂はこのムードに巻き込まれることなく、そっとその場を離れ、そして勝った。とても20歳とは思えぬ落ち着きぶりだった。

課題はスライス打つような技術の吸収

   伊達は大坂の強さをこう見る。「60~70%に抑えてプレーする場面と、100%の攻めで勝負にかける場面を見極める力がついたのが大きいですね。(今後の課題は)技術面の伸びしろ。攻める力はあるが、スライスを打ったりができていない。

   今はまだ吸収の段階ですが、これからそうしたショットを覚えるとプレーに幅が出てきます。メンタル面で追求心を忘れなければ、4大大会連続優勝も可能でしょう。(世界のテニス界に)大坂なおみ時代が来る可能性も考えられますよ」

   *NHKクローズアップ現代+(2018年9月12日放送「大坂なおみ 快挙の舞台裏」)