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長崎の離島で出土「マッチョ弥生人」は何者か?短躯だが骨太で筋骨隆々

   長崎・佐世保市の離島で8月(2018年)、弥生時代の遺跡からマッチョな男性の骨が発見された。農耕民とはまったく異なる、小柄ながら上半身が筋骨隆々の屈強な体の持ち主と推定された。人類学者が過去に出土した弥生時代の人骨を調べ直すと、マッチョな男性の骨は九州西北部の海岸沿いに広がっていたことが分かった。

   いったい彼らは何者か。「クローズアップ現代+」が古代ミステリーの謎解きに挑戦した。

考古学の常識がひっくり返った!

   見つかったマッチョ弥生人の身長は158.3センチ、骨は一般的な農耕民の弥生人よりも10%太い。とくに右腕の上腕骨が頑丈で、ゲストの「筋肉アイドル」の異名を持つ女子プロレスラー・才木玲佳よりも太かった。

   その骨の内部をCTスキャナーで調べたところ、上腕骨の断面がゆがんで変形していた。腕に強い負荷をかけると、それに耐えるために強い三角筋ができ、それによって骨も変形するという。

   マッチョ弥生人はどんな暮らしをしていたのか。鹿児島県南端の高橋貝塚という弥生時代のゴミの集積跡から、他所から持ち込まれたと見られる須玖式土器が見つかったという情報が入った。須玖式土器は赤塗りの洗練された土器で、九州北部で広く出土している。マッチョ弥生人の人骨が出た長崎の離島でも見つかっている。

   高橋貝塚では、真ん中に人の手で開けられた穴のある貝が複数見つかった。ゴホウラと呼ばれる巻貝で、これを加工した貝輪と呼ばれる装飾品を右腕にした男性の骨が、弥生時代の九州北部の墓から見つかっている。

   しかし、ゴホウラ貝は九州から1000キロ以上離れた沖縄近海でしか採れない。どうやら、長崎、九州南端、沖縄を結ぶ交流があり、これがマッチョ弥生人の謎を解くカギだった。

手漕ぎ舟ではるばる沖縄まで貝採り

   熊本大学の木下尚子教授は「九州北部で稲作を行っていた集団の権力者が、権威の象徴として貝輪を使った」と推定している。

   権力者のためにゴホウラ貝を求めて、手漕ぎの舟ではるばる沖縄まで貝を採りに行っていたのがマッチョ弥生人の正体なのではないか。1~2月にかけて、黒潮の上を北から南へ向かって風が吹く。これにのって沖縄までいくのは不可能ではない。

   木下教授は「マッチョ弥生人たちは、稲と引き換えにゴホウラ貝を手に入れ、貝輪を作らせていた。原始的な経済活動の始まりが行われていたのではないでしょうか」と推測する。

   追い風の乗るとはいえ、黒潮に逆らって漕ぎ続けるのだから、マッチョにもなるわなあ。

*NHKクローズアップ現代+(2018年9月26日放送「弥生時代に謎のマッチョ!骨から探る古代ミステリー」)