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「2000万円不足」の不安につけ込む危ない投資話!アパート経営の失敗・破綻続出

   「老後資金は年金以外に2000万円が必要」とした報告書が大きな波紋を呼び、少しでも収入を増やそうと、投資や副業に乗り出す人も少なくない。しかし、知識や経験不足から失敗する人が続出している。

   サービス業で働く54歳の男性に電話がかかってきた。アパートを経営する不動産投資への勧誘だった。男性は私立大学に通う2人の子供の教育費で老後に備えた貯金ができず、将来への不安が大きかった。勧められたのは関東近郊などのアパート4棟で、合計2憶6000万円の投資だ。勤務先の信用があるので、全額ローンで借りられると説明された。

   資料によれば、ローンを支払っても月々30万円のプラスになる。さらに、家賃保証もあるので空室リスクも抑えられると言われ、投資を決めた。しかし、実際は説明と大きく異なっていた。アパートは空き室だらけで、家賃保証もされなかった。収支は月46万円の赤字。投資を持ち掛けた不動産会社は、移転して所在不明。男性は「本当に後悔している」と話した。

   不動産会社の元営業マンは、老後の不安を煽って勧誘し、年間100棟のアパートやマンションを販売していたという。消費トラブルに詳しい荒井哲朗弁護士は、「投資は預金のお得なバージョンではなく、リスクを引き受けること。将来への不安がそのリスクを見えにくくしている」と説明する。

若者が騙される「真似っこビジネス」」

   こうした被害は若い世代でも急増している。去年(2018年)、友人を通じてある投資ツールを購入した20代の男性は、金融取引に役立つ情報が入っているというUSBメモリーを、消費者金融で借金をして53万4000円で購入した。業者は購入を進める際、将来の年金不安について繰り返し語っていたという。男性は購入したUSBのアドバイス通りに運用したが、あっという間に10万円が消えてしまった。男性は業者から、USBを買う人を紹介すれば1つ当たり6万円の紹介料を得られると説明されて、友人や知人を「マルチ商法」に巻き込んでしまった。

   国民生活センター相談情報部の小池輝明さんは、「若い世代からの被害相談は昨年倍増して800件になった」と話す。SNS上には「簡単に稼げる」とうたった違法な誇大広告が増えているのだ。その1つが「真似っこビジネス」と称する情報商材。SNS上で真似をするだけで月額150万円の収入が狙えると謳い、半年で3億円をだまし取っていた。業者は、1万5000円のマニュアルや数十万円の有料コース契約を4000人以上に売っていた。消費者庁は同様の業者を30社以上確認しており、注意を呼び掛けている。

リスク回避の「お化け屋敷理論」

   将来不安を煽った違法性の高い勧誘の手口には、いくつかの共通点があった。

   (1)「簡単に儲かる」「大金を稼げる」など、何もせず大金が入るように謳う

   (2)最初は、具体的にどのようにして稼ぐかなどを説明しない

   (3)「今なら無料(あるいは割り引き)。今すぐ契約を」と求める

   (4)「儲からなければ返金します」と安心させる

   ゲストの山崎元さん(経済評論家)は「不安喚起は常套手段」として、「人生100年時代、資産の寿命も延ばさないと大変なので投資しましょうと言って、商品やサービスを売るんです。こういう言葉が必要以上に出てくる広告は、疑って考えたほうがいい」と説明した。

   「お化け屋敷理論」を訴えるのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんだ。「お化け屋敷って、どこでどんなお化けが出てくるかわからないから怖いわけで、わかれば怖くないですよね。老後不安もそれと同じ。いつどんなお金のお化けが出るかがわかれば怖くない。1つは60歳で定年になった時に収入が大幅にダウンすること。これが最初の『収入ダウンの崖』です。次の崖は65歳で年金生活に入った時。それに備えて何をしていけばいいかを考えていくことが大事です」

   老後不安を解消するためには、計画的な預金が最重要だが、運用する場合は、自分が取れるリスクの範囲で運用すべきと山崎さんはアドバイスする。ポイントは手数料で、「できるだけ商品の手数料が小さいもの運用します。年間の手数料0.5%を下回るものにすれば、コストが高すぎる商品を避けることができるし、悪い人間の勧誘を近づけにくくする」と、0.5%ルールを訴えた。

   武田真一キャスター「定年後の生活をイメージするのは難しいですが、やはり月々計画的に使っていくってことも大事だということですね」と話した。

バルバス

NHKクローズアップ現代+(2019年7月2日放送「"老後2000万円" 将来不安につけ込まれるな!現役世代に落とし穴も...」)