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<オトナの土ドラ「それぞれの断崖」>(フジテレビ系)
殺人犯の母親と被害者の父親が、いつしか禁断の恋に!丁寧な描写につい惹きつけられる秀作

   東海テレビによる「オトナの土ドラ」シリーズ最新作。昨年(2018年)2月放送の「家族の旅路」と同じ遠藤憲一が出演、原作者・小杉健治やプロデューサー、監督らも再集結した。脚本は「はぐれ刑事純情派」などの洞澤美恵子が担当。往年の昼ドラ時代のスタッフも多い。

   遠藤憲一演じる主人公・志方恭一郎は、中学2年の息子を同級生の少年に殺されたが、あろうことか加害者少年の母親・八巻はつみ(田中美里)と不倫の恋に堕ちてしまうというストーリー。先日の第4話は、まさにその二人が遂に愛し合ってしまう大盛り上がりの回だ。

   当初から志方は加害者に断罪を求める気持ちがあまりに強く、加害者少年の少年院がどこか探ろうとしていた。そのうち、母親・八巻はつみの尾行に成功し、彼女が勤務するスナックに、名前を偽り客として潜入する。そして、はつみ(源氏名「ミキ」)を指名すると、息子のことで寂しく辛い思いをしていたはつみは、志方に徐々に好意を持ち始める。

スナックホステスの母親は、客として潜入した父親に好意を持つ

   はつみも、息子・満(清水大登)と面会するが、ロボットのように「今日ハ来テクダサリ、アリガトウゴザイマス。」と言われたり、差し入れした本をビリビリにされたり、散々な目にあう。こういうところは、だいぶ昼ドラっぽい。

   その時のショックもあり、次に志方が店に来たとき、はつみは泥酔状態。志方ははつみを自宅に送り届ける。そこで、加害者少年の手紙を読んでしまう。その直後、はつみが目を覚まして「帰らないで! 独りにしないで独りはもう嫌! お願い、今夜は一緒に居て!」と抱きつかれるが、志方は「後悔する」とギリギリでさえぎって帰るのだった。

   しかし、そんなことをしていると双方、家族に何となく感づかれるもの。志方は閑職に飛ばされたこともあり、妻・雪子(田中美佐子)に叱られ、そっけない態度をとられる。はつみの方も、息子との面会で「違う! いつもと違う!(男がいるの)隠したってわかる。俺なんか捨てて生きてけよ。母さんにとって俺は何!? もっとちゃんと俺を見てくれよ。そばに居て欲しい時に母さんは居なかった」と泣きつかれる。

   はつみはショックを受け、スナックを無断欠勤。心配して自宅を訪ねた志方だったが、はつみは「もうあなたとは会わない。帰ってください」と言い放ち、息子が殺人犯であることを告白。志方が「更生できなかったら、どうするつもりだ?」と聞くと、はつみは「満を殺して私も死にます」。これを聞いた志方は、はつみを強く抱きしめ、「君を独りにはしない」と遂に二人は結ばれるのだった。

   人間同士の、気持ちが伝わっているようで、上手く伝わっていない会話のやり取りが本当にリアルで、なかなか描けるものではない。志方とはつみの愛が通じ合う過程も非常に丁寧に描かれており、見る者を惹きつける。第5話以降はいよいよこの関係がバレる修羅場が待ち受ける。 (8月24日夜11:40)

鯖世傘晴