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大人の引きこもりの裏に発達障害!上手に仕事こなせない、付き合い苦手・・・自信喪失してうつ状態

   大人のひきこもりと発達障害に関係がありそうだという。先月26日(2019年10月)に開かれた「成人発達障害支援学会」でも注目され、専門家から「早期診断で適切な治療を提供すべきだ」とされた。

   取材を続けている「クローズアップ現代+」には、これまで1400通のメールが寄せられた。「NHKはひきこもりの問題を発達障害と絡めて放送してほしい」「発達障害が早くわかっていたら、人とも話せたと思うし、もっと仲間と関われたんじゃないか」「発達障害の診断が遅れたことでひきこもりが長引き、他の症状を併発し、より外出が難しくなった」と訴えていた。

   メールしてきた大阪在住の男性がひきこもりになったきっかけは、国立大学で経済学を学んだものの就活に失敗し、食品工場でアルバイトを始めた時だった。複数の作業を同時にこなすことができず、わずか半年で退社。それが発達障害によるものとは気づかず、自信喪失からうつ状態になり、ひきこもり生活が始まった。男性は「作業のやり方とか段取りとか、一発で覚えられないので、『なんで覚えられないんだ』となじられ、食事もノドを通らない状態でした」と話す。

   しかし、26歳の時に発達障害の診断を受けたことが大きな転機になった。「自分は普通とは違うんだなとまず思いました。じゃどうしたらいいんだろうということで、精神障害者が受けられる行政とか福祉サービスとかを知りまして、利用しようと思いました」

   職業訓練などのサービスを受け、ひきこもりも徐々に改善していった。5年前に障害者枠で正社員として就職し、人一倍正確さにこだわりを持つ特性を生かし、現在はトイレットペーパーの品質管理の仕事に携わっている。男性は「周りの人から必要とされているんで、自分も応えなきゃいけない。そういうふうに心境も変わってきました」と話す。

診断難しく精神科医も見落とし

   以前から、医療関係者や支援の現場では、発達障害とひきこもりの関係が指摘されていた。ところが、発達障害は見過ごされ、ひきこもりが長期化して、合併症などで苦しむ中高年のケース増えているという。

   武田真一キャスター「ひきこもりの長期化の裏に発達障害の原因があるという実態は、どのくらい把握されているのでしょうか」

   取材を担当している菅野明彦記者によると、全国5か所の精神保健福祉センターを訪れたひきこもりの148人のうち、約3割が発達障害と診断されたという。発達障害が見過ごされがちな原因について、大正大学心理社会学部の内山登紀夫教授は次のような指摘をした。「診断の手法が確立されていないからです。うつ病などの合併症などで発達障害が見えにくいということもあります。脳波や画像診断ではわからないので、過剰診断や過小診断など、きちんとした診断基準がありません。精神科医には安易に診断する人もいます」

   東京・渋谷に、発達障害でひきこもりを経験した男性(35)が一念発起で始めたバー「ブラッツ」があり、発達障害者の憩いの場なっているという。

NHKクローズアップ現代+(2019年10月30日放送「長引くひきこもりの陰で~見過ごされる中高年の発達障害~」)