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近視は万病のもと・・・矯正視力0・7未満で認知症急増!シンガポールや台湾は国を挙げて予防策

   視力1・0未満の子どもが増えている。東京医科歯科大学先端近視センターの横井多恵医師は、近視が緑内障や網膜剥離といった「失明の危険もある眼病につながる恐れがある」「30年後、50年後がすごく心配です」という。強度の近視の人は、通常の人に比べて、緑内障のリスクは3・3倍、網膜剥離は21・5倍、近視性黄斑症は40・6倍も高まるという研究もある。

   日本近視学会の大野京子理事長は「進行を完全に止めるのはむずかしいです。いまは合併症に対する治療が中心」と解説する。ただ、ここ数年、大きな研究成果も出ている。世界で最も近視が多い(20歳以上で80%)といわれるシンガポールで、近視の進行抑制に効果のある目薬が世界で初めて使われた。検査薬「アトロピン」をもとにした新薬で、「いまや子供の近視はコントロールできる」と研究者は自信を深めている。

   日本でも今年8月(2019年)から実用試験が始まった。近視対策には屋外での光が有効ということもわかってきた。1000ルクスを超す光を週11時間以上浴びた子どもは近視になりにくいというデータもある。20歳以下の80%が近視という台湾は、すべての小学校で週150分の体育の屋外授業を義務づける法改正を行った。他の教科でも屋外授業を推奨し、1000ルクスを1日2時間以上浴びることを目標にしている。

子どもの近視を放置しているのは世界で日本と韓国だけ

   オーストラリア国立大学のイアン・モーガン教授は、明るい光には近視に対する「劇的効果がある」ことを検証し、国を挙げての対策が必要という。しかし、屋内だと窓際でも800ルクスで、都内の小学校の校長は「休み時間だけでは1000ルクス1日2時間以上をクリアできない。体育や登下校時を入れてもむずかしい」と話す。

   モーガン教授によると「対策をとらないのは、世界で日本と韓国の2カ国だけだ」そうだ。シンガポールは国がゲーム遊びの時間を減らすなどの近視予防プログラムを作って取り組み、近視を2011年より5%少なくできた。中国はスマホやパソコンの時間を抑えることで子どもの近視を毎年0・5%減らす目標を掲げている。日本は「有効な対策に明確な答えをもっていない状態で、調査をして、来年度には周知したい」(文部科学省)という段階だ。

   大野理事長は「(大人も)木陰でかまわないから、屋外に出るのがいい」と勧めている。「近視は単にメガネが必要な状態をさすのではなく、高血圧や糖尿病と同じでいろいろな病気に影響する」と強調する。奈良県立医科大学の緒方奈保子教授が3000人を対象に調査したところ、認知症の疑いが、視力良好な人では5・1%だったのに対し、矯正視力0・7未満の人では13・3%に上った。脳が得る情報の80%は目からで、脳への刺激が減ると認知機能は低下する。「目は万病のもと」と緒方さんはいう。

   *NHKクローズアップ現代+(2019年11月7日放送「近視の常識が変わる!」)